仙台育英が東北との宿敵対決を9回サヨナラ9-7で制し、秋8連覇へ勢いを加速させた。9回表に4失点して2度目の逆転を許したが、最後は笹倉世凪(せな)投手(1年)がバックスクリーン左に特大サヨナラ3ラン。

今夏の甲子園で投打に活躍した経験を生かし、土壇場で主役となった。仙台商、仙台城南、古川工も4強入りし、上位3校に与えられる東北大会(10月11日開幕、岩手)出場権に王手。準決勝は21日に仙台市民球場で行われる。

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笹倉が強い西日のスポットライトを浴びた。1点差に迫り、なおも無死一、二塁。低めの変化球を豪快にすくい上げた。高々と上がった白球は強風にも乗って、バックスクリーンのわずか左で大きく弾んだ。「得点圏にランナーがいたので、センターに単打だと思って打席に入った。サヨナラホームランは人生初です。風のおかげですが、来たコースを素直に打てているのが良かったと思う」。聖和学園との2回戦(17日)に続く高校通算2発目。殊勲弾で仲間から拍手喝采も浴びた。

まさに“自作自演”だった。飯山(長野)との今夏甲子園1回戦でも先発した最速147キロ左腕。9回表には、同じく聖地で戦った右腕・伊藤樹(1年)の後を受け、一塁からマウンドに立った。1点差に迫られ、なおも無死二、三塁の一打逆転の危機。「2年生もいる中で(背番号)1番をつけることは、ピンチの時に投げきってほしいという願い。打てた喜びよりも抑えられなかったことが悔しい」。いきなり左越え2点適時三塁打で逆転を許すと、押し出し死球。「打撃も5番なので打たなくてはいけないけれど、次は背番号1の役割でしっかり投げないといけない」と反省の言葉が並んだ。

東北とは直近約2カ月で3度目の対戦。今夏の県決勝では1-6から逆転して15-10で勝利した。今秋の中部地区予選では9回に自身が逆転を許したが、同裏にサヨナラ適時打で6-5と、この日と同じ展開。「東北は宮城県でレベルの高い高校だし、自分にとっても打ったり、抑えたりすることで自信になる」。宿敵にも敬意を表し、また1つ成長した。

競った展開を予想していた須江航監督(36)も「高校1年生で風のいたずらでもバックスクリーン横にサヨナラ本塁打なんて見たことない」と賛辞を送った。一方で「(先発)向坂、(2番手)菅原がひと皮むけて東北大会に投げられるようにならないと日本一なんで夢のまた夢」。笹倉、伊藤に並ぶ投手陣の“共演者”出現も求めた。

8年連続33度目となる秋の東北大会出場に王手。笹倉も「県で優勝しなくてはいけない。そのためにも甲子園を経験している自分が引っ張らないといけない」と自覚も芽生えてきた。今夏、星稜(石川)に1-17と大敗した悔しさを晴らすためにも、来春センバツ切符獲得まで負けられない。【鎌田直秀】