白樺学園が札幌日大を12-8で下し十勝勢初、北北海道勢では07年駒大岩見沢以来12年ぶり秋全道制覇を果たした。3点ビハインドの5回に打者10人で4長短打と4四球を絡め6点を奪い逆転。両チーム計27安打の打撃戦を制した。

春夏2季連続地区敗退も、主将の業天汰成捕手(2年)を中心に再起。“甘えん坊大将”を全員で支え、頂点に立った。明治神宮大会(11月15日開幕、神宮)出場権を獲得、十勝勢初のセンバツ(来年3月開幕予定、甲子園)切符も有力となった。

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最後の打者を三振に斬ると、業天はマスクを飛ばし真っ先にマウンドの坂本武に抱きついた。2人の投手を操り、さらに両軍で27安打の打撃戦を制した。「春夏と連続で地区で負け、この秋こそ絶対に勝つという気持ちでやってきた。3-6のときはやばいと思ったが、みんなが引っ張っていってくれた」。準々決勝まで打率1割5厘の男は、勝負どころの準決勝、決勝の2戦で8打数5安打1打点と復活。この日も5回1死一、二塁から右前打でつなぎ、9点目の生還を果たした。

7月、3年生の推薦で主将就任が決まった。戸出直樹監督(43)は「元々、気持ちの面でぬるい部分があったので、主将にしたら言い訳ができなくなって変わるのでは、という意見が多かった」と言う。姉瑠華さん(東京国際大1年)が女子サッカーの元U-15日本代表候補。幼少期から姉に引っ張られる根っからの弟気質だった業天にとって、青天のへきれきだった。

周囲はあえて厳しく接し“甘えん坊”を鍛えた。エース片山は、智弁和歌山の黒川史陽主将(3年)がチームメートに激怒する動画を見せた。「キャプテンは、これぐらい厳しくやらないと強くなれないんだ。お前が変わらないとずっと勝てないぞ」。片山、業天とともに前チームから主力で副主将の宮浦は「何言ってるか分からないときは厳しく突っ込みました」と振り返った。仲間の叱咤(しった)を受け成長した業天は「みんなのおかげで、厳しいことも少し言えるようになった」と感謝した。

今夏、地区代表決定戦で帯広北に延長11回の末、1-2で敗れた。正捕手の業天は配球面の責任を感じ号泣した。その日は週末で、寮生は外食を許可されていたが「外に出る気が起きず食欲もあまりわかなかった」とコンビニエンスストアで気休めにラーメンサラダ1個を買い、寮で1人すすった。失意の晩ご飯から3カ月半、十勝勢初の秋の全道王者に立った。たたかれ強くなったリーダーを中心にさらに絆を強め、次は全国舞台へ挑んでいく。【永野高輔】

◆白樺学園 1958年(昭33)に帯広商として創立した私立校。65年、現校名に改称。生徒数は415人(女子108人)。野球部は開校と同時に創部。現部員は1、2年生で33人。甲子園は夏3度出場。ほかの運動部では陸上、アイスホッケー、スピードスケートなどが全国レベル。主なOBはスピードスケート五輪メダリストの清水宏保、堀井学。所在地は芽室町北伏古東7線10の1。嶋野幸也校長。

◆十勝勢の秋全道成績 優勝は今回の白樺学園が初めてで、決勝進出は49年準優勝の帯広(帯広柏葉)以来2度目だった。4強には59年帯広柏葉、64年と81年の帯広三条、67年芽室、68年浦幌、92年帯広南商、13年白樺学園、19年帯広農が進出している。なお、春の全道Vは87年帯広北の1度。夏の北北海道大会制覇は15年白樺学園まで7校(のべ14度)で、南北大会分離前は49年に帯広が制している。