仙台育英(宮城1位)が11-8で鶴岡東(山形1位)との打撃戦を逆転で制し、3年ぶり10度目の東北王者に輝いた。7回裏に公式戦1号の右越え2ランを放った途中出場の佐々木涼外野手(2年)が、8回裏2死一、三塁でも左前への勝ち越しV打。11月15日開幕の明治神宮大会出場権(東京・神宮)を獲得し、5年ぶり3度目の秋日本一に挑む。

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高校初のホームランボールは、家族への感謝を伝える贈り物だ。佐々木は3点を追う7回裏無死一塁から内角直球を振り抜き、右翼芝生席に運んだ。「ストレートがシュート気味に入ってくる球を狙っていた。父や兄の助言と、スタンドの応援が押してくれました」と笑顔。不調だった大会前の自宅では父茂春さん(52)と意見の言い合いでケンカになるほど技術練習を重ねた。兄友希さん(22)からは電話で内角打ちの術を伝授された。「父にはボールを渡したいし、兄にはLINEで写真を送ります」。競り合いに終止符を打った勝ち越し打を含め、先発出場定着にも大きなアピールとなった。

チームは苦しい試合を重ねるたびに強さを増した。県大会準々決勝では東北相手に、笹倉世凪投手(1年)の逆転サヨナラ満塁弾で生き残った。明桜(秋田)との今大会初戦でも9回表に2点を奪って逆転し、延長勝ち。佐々木は「東北との試合以降、さらに競争は増したし、選手同士でアドバイスし合えるようになってきたことで、みんなレベルが上がった」と胸を張る。リードされた7回から始める紅白戦を繰り返して鍛錬。須江航監督(36)も「終盤3回の強さが新しい伝統になりつつある。良い顔でやっていたので必ずひっくり返せると思った。選手とも『大阪桐蔭、履正社にどう勝つのか』と話しています」と甲子園優勝校撃破をイメージし続ける。

明治神宮大会でも強豪との貴重な試合経験を積む。仙台育英OBでもある兄も、12年の同大会初戦で9回に3ランを放っているだけに佐々木は「自分も一緒の舞台で打ちたい」。今大会全4戦2ケタ安打の強力打線向上に寄与してくれた宿敵のためにも、来春センバツの「神宮大会枠」も勝ち取る。【鎌田直秀】