昨秋8強の盛岡三が、同4強の盛岡商とのシーソーゲームに9-7で競り勝った。7-7の同点で出迎えた8回裏1死一、二塁で二塁走者の高橋一輝外野手(3年)が盗塁を仕掛けると、相手投手の暴投を見逃さず一気に生還し、決勝点。エース右腕・利府寛太(3年)も5回以降は1失点に封じて粘った。秋3位の一関学院、同8強盛岡一など7校が代表決定戦を突破し、11日開幕の県大会出場校31校が出そろった。

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勝利への執念が、得点を生んだ。同点の8回、3安打を放っていた高橋が四球で塁に出ると、要所で踏ん張ってきた利府が右前安打で続き一、二塁。相手バッテリーの隙を見逃さず、盗塁を仕掛けた高橋。「1点がどうしても欲しかった。キャッチャーがそらした瞬間にいけると思いました」。躊躇(ちゅうちょ)することなく三塁ベースを蹴り、ホームへスライディング。ベースカバーに入った投手のタッチをかわして、球審の広げた両手を確認すると拳を握った。

昨秋の県大会は準々決勝で一関学院に2-7で敗れた。1回表に3失点すると、2回にも3失点。この日も盛岡商に失策や死球絡みで3失点スタート。だが、練習中に「勝つ」という言葉の意識を継続させてきた成果を体現した。1回裏に「1番右翼」小谷地海生外野手(3年)の左越え二塁打を皮切りに、3連続二塁打で反撃開始。「5番遊撃」佐々木聖太内野手(2年)の中犠飛で同点。3回にソロ本塁打で勝ち越されても、直後に「6番中堅」後藤謙介外野手(3年)の走者一掃となる右越え二塁打で逆転した。

コロナ禍による自粛や練習制限の中、各自が自宅での自主練習に重きを置いてきた。SNS等でみんなの練習を共有。高橋も「食べたご飯や、スイングなどもお互いが意識しあっていた。勉強もやりながら両方で集中出来ていた」。練習試合での逆転勝ち連続で手応えは得ていた。「県大会もみんなでつないで優勝したい。支えてくれた方に恩返ししたい」。高い打率、高い機動力、高い意識の「三高」を備えた夏が始まった。【鎌田直秀】