国士舘の背番号20、中里遼哉内野手(3年)がコールされると、スタンドから拍手が起きた。4-1で迎えた9回の守り。駆け足で二塁の守備へ向かった。

一般受験で入学。158センチ、46キロと小柄だったが、「レベルの高いところでやりたい」と強豪の門をたたいた。周りとの力の差を痛感しながらも、家族やチームメートの支え、励ましもあり、ひたむきに野球を続けた。永田昌弘監督(62)も「本当に真面目。体は小さいが、やる気は人一倍」と評価する。

同監督は今大会を3年生だけで臨むと決めた。毎試合、ベンチ入りメンバーの登録変更が可能で、控え選手を順番に入れ替えていった。中里は初戦の清瀬戦で、初めて公式戦のベンチ入り。9回に二塁で起用の予定だったが、出番が来る前の8回にコールド勝ちした。その後の2試合は登録メンバーを外れた。

4試合目となったこの日、再びベンチ入り。試合中はバット引きや声出しでチームを支えた。最終9回、ついに出番が訪れた。エース中西が早実の先頭から遊ゴロ、空振り三振で2死を奪った。そこで、他の控え選手と交代した。打球を処理することはなかったが、公式戦初出場を果たした。

永田監督は「普通に出すことができました」と、グラウンドに立たせられたことを喜んでいた。

実は、中里にとって「早実」は特別な意味がある。小学校に入る前、家の近くで行われた早実の試合を父親と一緒に見たことが、野球に興味を持つきっかけだった。その時に投げたのが、早実のエース斎藤佑樹。「自分は覚えてないんですが、斎藤さんが途中から出てきて、すごく盛り上がったそうです」。早実戦で公式戦デビューしたのも、運命だったのかもしれない。