市和歌山(和歌山1位)が智弁和歌山(和歌山3位)を破り、ベスト4を決め、来春のセンバツ出場を有力とした。

プロ注目の最速152キロ右腕小園健太(2年)が智弁和歌山の強打線を4安打完封。県内のライバルとなった両者の対決は今夏の新人戦、県大会と市和歌山の3連勝となった。

こん身の110球目。最後の打者を一塁ゴロに打ちとり、小園が人さし指を立てた右手に力を込めた。「あの瞬間は頭が真っ白で…」。県内最大のライバルを倒し、来春のセンバツを手中にしたが、無我夢中で実感はなかった。

「大げさに聞こえるかもしれませんが、命をかけて、持ってる力のすべてをかけて、勝つことだけを考えていました」

現チームで、智弁和歌山と3度目の対戦だった。9月5日の新人戦準決勝は終盤3回を1安打無失点に抑え、6-3。3日の県大会準決勝は被安打11の完投で5-4。2連勝はした。しかし、3連勝するには足りないものを感じていた。

「リリースに最後まで気を配れていなかった」という。いい回転の、もっとスピンの効いた直球を-。小園が「サンドボール」と呼ぶ、表面がゴム製の球がある。「回転軸がブレないように。いいスピンを効かせるように」。体感で硬球の約3倍重い球をスナップスローで、人さし指、中指のリリースを意識して、2~3メートル先の壁にぶつける。自分で考えたオリジナルの練習に力を入れた。

中学時代からバッテリーを組む松川虎生主将(2年)とは、配球を考えた。外角中心だった2戦を踏まえ、的を絞らせないように。「インサイド」「真っすぐ」がテーマだった。

序盤の3回は全部、二塁走者を許したが、初回をツーシームで併殺に打ちとるなど無失点でしのいだ。6回2死三塁では、4番徳丸天晴(2年)を速球で詰まった一邪飛に仕留めた。芯を食った当たりは、3回に9番大西拓磨(2年)に打たれた中前打ぐらいだ。真っすぐを軸にカットボール、スライダーなどをちりばめ、全国有数の強打線を散発4安打、4奪三振で完封した。

「自分の1番のピッチングができました」と小園は胸を張った。県大会準決勝では感極まって号泣したが「今日は大丈夫です」と笑った。それほどの出来だ。でも、まだ足りない。「近畿大会2勝が目標でしたけど、優勝して、近畿1位でセンバツに行きたい。それまでに空振りを取れる真っすぐを身につけたいです」。大一番を乗り越え、紀州の快腕が新たな目標に思いをはせた。

◆小園健太(こぞの・けんた)2003年(平15)4月9日生まれ、大阪・貝塚市出身。小学1年で野球を始め、貝塚第一中時代は貝塚ヤングに所属し、高校でもバッテリーを組む松川虎生捕手とともに全国制覇を経験。市和歌山では1年春からベンチ入り。185センチ、85キロ。右投げ右打ち。