山形高校野球の春が2年ぶりに幕を開けた。開幕戦に登場した昨夏の県8強の山形学院が、10-0で5回コールド発進。先発したエース左腕、木村吏玖(2年)が山形東に無安打無失点の快投。キレのある直球に90キロ台の変化球を織り交ぜ、相手打線を翻弄(ほんろう)し、2度の3者連続三振を含む9奪三振もマークした。打線は4回に一挙7得点を奪うなど、2番渡辺隼士外野手(2年)が3打数2安打4打点の大活躍だった。

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木村吏は初の背番号1で臨み、奪三振ショーを披露した。2回の先頭打者に四球を与えるも、3者連続三振で後続を打ち取る。以降は毎回の9奪三振。5回も打者3人を三振で締めた。「緊張は少しあったけど、抑えられたのが良かった」と冷静に振り返った。

課題も忘れない。5回をノーヒットノーランに抑えたが、要所でボールが抜けて4四死球。2四球はイニングの先頭打者に与えたものだった。「自分の甘さが出てしまい、コースに投げ切ることができなかった。40点くらい」と自己評価は辛口で、勝利の余韻に浸ることはなかった。

今冬は鉄球で指先を鍛え、体幹トレーニングに重点を置いた。この日の最速124キロ直球には、スピード以上のキレがあった。90キロ台のカーブと100キロ台のスライダーを織り交ぜ、相手打線を翻弄。持ち味の緩急を生かした投球を発揮した。「冬のトレーニングで、真っすぐの質は上がった。もっと、自分が納得のいく投球を目指したい」とさらなるレベルアップを見据える。

今春センバツは同じ高校球児として、刺激をもらうきっかけになった。特に、甲子園で2試合に先発した仙台育英(宮城)の古川翼投手(2年)が、一番印象に残っている。木村吏は「自分と同じ左腕で、同学年の選手が甲子園で投げている姿を見ると、自分もあの舞台(甲子園)に立ちたいと思うようになった」と、闘争心を燃やしている。

チーム目標は、春の東北大会出場だ。次戦は24日、山形南と対戦する。「四死球を出さないで、コースにしっかり投げ込んでいく」と力強く意気込んだ。【佐藤究】