不来方10人でセンバツ エース小比類巻、打倒清宮

不来方ナインから胴上げされ笑顔を見せる大黒柱の小比類巻(撮影・高橋洋平)

 第89回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園)の選考委員会が27日、大阪市内で開かれ、部員10人で昨秋の岩手大会準優勝を果たした不来方(こずかた)が21世紀枠に選出。春夏通じて初の甲子園出場を決めた。組み合わせ抽選会は3月10日に大阪市内で行われる。

 待ってろ清宮! 強い相手にこそ燃えるのが、大黒柱だ。エース兼4番打者の小比類巻圭汰主将(2年)は、出場が決まった高校通算78本塁打の早実・清宮について聞かれ「対戦してみたい選手の1人。ホームランを打って注目されている。そういう人たちからアウトを取れれば自信になる」と怪物との対戦を熱望した。

 投打で存在感を発揮してきた。特にエースナンバーには人一倍、思い入れがある。昨秋の地区大会初戦は小比類巻が温存され、盛岡一に完封負けした。試合後のミーティングで小比類巻は小山健人監督(30)に先発を直訴した。「全部投げられないなら、背番号1はいらない。10人しかいないのに、他に任せるのは嫌。せっかく1番をもらったので、全試合いきたい」。その後8戦連続で先発し、計67回を1人で投げ切って有言実行。強気と勇気を備えたタフなハートを武器に、エースの責任を全うした。

 甲子園でも自慢の「一点豪華主義」を貫く。新チーム始動から、人数が少ないため守備練習を捨て、練習のほとんどを打撃に充ててきた。小比類巻は言う。「打てなかったら終わりだけど、そんなショボい練習をしてるわけじゃない。(打撃と)1回決めたらもう引けない。いまさら守備やろうって言っても無理。打撃を伸ばすしかないし、迷いはない」。雪が降った12月初旬からはボールを触らず、今は体づくりに専念。進化した肉体を試すことになる2月の愛知強化合宿が楽しみで仕方ない。

 小比類巻にとって、少人数はハンディではなかった。「他から見たら自分たちは異常なチームだと思うけど、打撃だけで勝ってきた。おかしいなと思っている人たちを倒して上に行きたい。やってきたことは間違いじゃない。こんなチームが増えれば、高校野球も面白くなる」。10人の不来方が、常識を打ち破る。【高橋洋平】

 ◆不来方 1988年(昭63)に開校した公立校。野球部も88年に創部。人文、理数、芸術、外国語、体育の5学系に分かれる。生徒数は828人(女子455人)。部員は10人で、女子マネジャー3人。甲子園出場はなし。主なOBはボートレース菊地孝平。所在地は紫波郡矢巾町南矢幅第9地割1の1。平藤淳校長。