札幌第一、逆襲のセンバツ 昨春初戦敗退の屈辱バネ

センバツ出場が決まり雪上で喜ぶ札幌第一ナイン(撮影・山崎賢人)

 逆襲の春がやって来る。第89回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園)の選考委員会が27日、大阪市内で行われ、昨秋の北海道大会を制した札幌第一が、2年連続2度目のセンバツ切符を手にした。初出場の昨年は木更津総合(千葉)を相手に2-5で初戦敗退した。大舞台で味わった屈辱を胸に、09年夏以来の甲子園白星を目指す。

 濃紺と白の帽子が高々と投げ上げられる。菊池雄人監督(44)は5度、宙に舞った。そして、歓喜の雪上ダイビング。昨春と同じ“セレモニー”が終わると、札幌第一ナインは、すぐに真顔に戻った。中村泰賀主将(2年)は「北海道の代表に選ばれて素直にうれしい。さらに気が引き締まった。昨年の悔しい思いがある。その経験を生かして戦いたい」。屈辱を味わった選手たちに、甲子園決定の浮かれたムードは消えていた。

 「甲子園での悔しさは、あの場所でしか晴らせない」。主砲の高階成雲外野手(2年)は1年間、この言葉を胸に刻んできた。昨年1回戦木更津総合戦、3番でスタメン出場したが、無死満塁の絶好機に見逃し三振。3者連続三振の引き金になった。「野球をやって来て、一番つらかった。あの打席を忘れたことがなかった」。練習でも、ゲームでの打席でも、常に「あの場面」を想定して向き合った。

 昨秋の明治神宮大会準決勝では西の横綱、履正社(大阪)に完敗した。高階は「体から違った」と、冬場は体重アップを目指した。毎食どんぶり飯3杯をノルマに、70キロそこそこだった体重は79キロに。「体脂肪率は10%を維持したい」と、苦手だった筋力トレにも真剣に取り組み、70キロだったベンチプレスは82キロまで増えた。就寝前の50回の腕立て伏せも欠かさず「打撃でもパワーを実感できるようになった」。全国に通じる、肉体とパワーを身にまとった。

 昨春のセンバツ経験者は高階を含め7人。2番打者で無安打に終わった佐藤真那人内野手(2年)も「手も足も出なかった。今年のチームカラーは粘り。粘り勝ちたい」とナイン全員の気持ちを代弁する。「甲子園には勝負しに行くという気持ち。食らいつく野球をしたい」と菊池監督。1年間、聖地での雪辱のために戦い続けた札幌第一ナインが、忘れてきた誇りを取り戻しに行く。【黒河祐介】

 ◆札幌第一 1958年(昭33)創立。男女共学の私立校で、生徒数1337人(女子605人)。創立と同時に創部された野球部は甲子園に夏3度、春1度出場。進学率99%を誇り、バドミントンなどスポーツも盛ん。主な卒業生にリオ五輪で日本選手団旗手を務めた陸上男子10種競技代表の右代啓祐らがいる。所在地は札幌市豊平区月寒西1の9の10の15。浜館宏樹校長。

 ▼2年連続の選抜高校野球出場を決めた札幌第一は、北海道勢では12、13年の北照以来、史上6校目(のべ7度目)となる。53、54年の北海が連続出場の皮切りで、北海は60~64年には5年連続出場。その後は函館有斗(現函館大有斗)が73、74年、札幌商(現北海学園札幌)が75、76年、駒大岩見沢(閉校)が92、93年に連続出場している。