早実・清宮「スッキリ」肉体強化で復活80&81号

試合後、高校通算80本塁打達成の記念撮影を報道陣に求められるも「たいした記録じゃないんで」と苦笑いで断る清宮(撮影・河野匠)

<高校野球春季東京大会:早実14-2駒大高>◇15日◇準々決勝◇神宮第2

 苦しんだ末に新たな姿を手に入れた。早実・清宮幸太郎内野手(3年)が、駒大高戦で40打席ぶりの1発となる高校通算80号を放った。4回に右中間に3ランをたたき込むと、5回には中堅左に2打席連続の81号2ランをマーク。ボールに詰まっても、体が泳いでも、柵越えする17年度版「清宮スタイル」を体現した。5打点の活躍でチームは14-2の5回コールドで4強進出を決めた。

 清宮特有の乾いた金属音は響かなかった。5点リードの4回1死一、二塁。内角の直球に「かなり詰まった」と言いながら、コマのような鋭い軸回転ではじき返した打球は、右中間のネットにぶち当たった。今年の公式戦初アーチで、1年春に目安に挙げていた通算80号に3年春で到達した。「これだけ本塁打が出なかったのは初めて。スッキリした。目標ではないですが、出たことは素直にうれしいです」とほおを緩めた。2回戦敗退だった今春センバツ、練習試合も含めて40打席ぶりの1発だった。

 冬のトレーニングの成果が、ノーアーチの呪縛を解き放った。5回1死一塁、今度は外角の直球を泳ぎ気味ながら、中堅左に運んだ。「あんなんで入ってしまう…」と苦笑した。完璧なスイングでなくても、1発を打てる。それこそ、清宮が求め続けた境地だった。

 清宮 会心の当たりでなくても、入ることを目標に、意識してトレーニングした。今日の2本は冬場にしっかりやった成果です。

 この冬は、体幹とウエートトレーニングで肉体強化を徹底した。個人でトレーニングジムにも通って、体重は自己最重量の100キロを超えた。グラブに刺しゅうした「BE CREATOR」(創造者になれ)の言葉通り、高校野球界の最先端を突っ走って、結果で証明した。

 メモリアル弾は高校生活の原点をよみがえらせてくれた。駒大高は、高校のデビュー戦の相手で、神宮第2は高校1号を放った思い出の地だった。「思い返してみれば、そうですね。高校野球を始めた時の気持ちというか、初心に帰って、懐かしいな」と、少しだけ感慨に浸った。

 センバツ以降、不調に悩んだが、映像を見返し、自らの力ではい上がった。「いろいろ試して、これかなと思った」と下半身の動きを中心に修正した。不振をも「1つの経験。いい引き出しができた」とプラスにとらえた。「本塁打数は目標にしていない。打てるだけ打ちたいし、目標はチームを優勝に導ける打撃」と頼もしく話した。最強スラッガーが目を覚ました。【久保賢吾】