早実・清宮連発84号「勝った瞬間思った」夏の大役

9回裏早実無死一、三塁、同点の中越え3点本塁打を放つ清宮(撮影・足立雅史)

<高校野球春季東京大会:早実18-17日大三>◇27日◇決勝◇神宮

 早実・清宮幸太郎内野手(3年)が2打席連発となる高校通算83号、84号を放ち、チームを秋春の東京大会連覇に導いた。好敵手の日大三を、延長12回の末、18-17のサヨナラ勝ちで退けた。春の優勝は荒木大輔を擁した82年以来、35年ぶり9回目。史上初のナイター決勝に主催者発表2万人の観衆が集まり、前代未聞の熱闘を見届けた。

 未体験の興奮に、体が自然と反応した。3点を追う9回無死一、三塁。清宮は打った瞬間、それと分かる最高の感触を、派手なガッツポーズで表現した。2打席連発となる値千金の同点3ラン。大阪桐蔭・中村(西武)を超える通算84号で延長戦に持ち込んだ。

 清宮 野球人生でガッツポーズをしたことはなかったですけど、思わず出ちゃいました。

 8回に高校通算83号の2ランを放ち、試合を決定付けたはずだった。右翼手が打った瞬間に固まるスタンド上段への特大弾。それでも、直後の9回に7点を奪われ、逆に4点のビハインドを背負った。「点を取っても、取られて。思わず笑っちゃうような…。でも、いくら取られても返せる自信はあった」。

 9回の打席に向かう直前も、三塁ベースコーチの「笑顔でいけ」とのゲキが聞こえ、ニヤッと笑った。4時間2分の大熱戦の中、前向きに、笑顔でグラウンドに立ち続け、チームを劇的なサヨナラ勝利に導いた。

 清宮が、ずっと求め続けた結果だった。昨秋の東京大会の日大三との決勝。チームはサヨナラ勝利を飾ったが、自身は5打席連続三振で沈黙した。「打点を稼ぐバッティングを」。あの日以降、口癖のように繰り返したここぞの一打を決勝の舞台、それも日大三を相手に成し遂げた。

 この日、記録を超えた西武中村も同じポリシーを持ち続ける。プロ野球の世界で本塁打を“おかわり”しても、チームが敗れれば「意味はない」と口にする。自身は高校3年夏の大阪府大会で6本の本塁打を放ったが、甲子園出場を逃した。「チームの勝ちにつながる1本」にこだわる姿は清宮も同じだった。

 チームは35年ぶり9回目の優勝を達成した。春の東京大会を制した主将は、夏の開会式で選手宣誓を務める。「勝った瞬間、思いました。やるからにはしっかりやりたいです」。神宮のカクテル光線に照らされ、清宮が輝きを放った。【久保賢吾】

 ▼早実・清宮が準々決勝の駒大高戦から3試合連続本塁打。清宮の公式戦3戦連発は昨秋の都大会以来2度目。神宮球場での本塁打は昨秋の明治神宮大会決勝(対履正社)に次いで通算2、3本目で、1試合2本は初めて。