みちのく大器に覚悟の顔 決意胸にドラフト吉報待つ

決意の色紙に「信」と書き込む仙台育英・西巻

 プロ野球ドラフト会議が今日26日に都内で行われる。東北6県からは15人の高校生と7人の大学生、計22人がプロ志望届を提出した。仙台育英(宮城)西巻賢二内野手、盛岡大付(岩手)比嘉賢伸内野手、大曲工(秋田)藤井黎来投手、鶴岡東(山形)吉住晴斗投手(いずれも3年)の4選手が運命の日を前に、決意や思いを色紙にしたためた。書き込まれた文言には、背負ってきた野球人生が凝縮されていた。【取材・構成=高橋洋平】

 仙台育英の小さな巨人、西巻は泰然自若の姿勢を貫く。「今更どうこうできない。選んでいただけることを“信”じて待ちます。ドラフトが近づくにつれて、わくわくする気持ちが強くなってきた」。引退した愛媛国体後も練習を続け、1日2時間ほど汗を流している。「プロではもっと自分の色を出していかないと」と鉄壁の守備をベースにする。50メートル走は6秒1だが「まだまだ速くなる。もっと上げていきたい」とさらなる成長を約束した。

 U18W杯では自慢の守備が通用した一方で、まだ伸びしろがある打撃面では強打者からヒントを得ていた。「履正社(大阪)の安田(尚憲)は2-0からの3球目を狙いにいって、確実に1球で仕留めていた」。バントなどの得意な小技以外もさらに磨いてスケールアップを狙う。

 バラ色の高校野球人生だった。3度の甲子園出場に、高校日本代表、愛媛国体も経験した。「プロ入りが実現したら、高校まで支えてくれた人たちにいい報告がしたい」と胸を張った。

 盛岡大付を県勢初の3季連続甲子園に導いた主将の比嘉は、強「心」臓の持ち主だ。今夏の甲子園、松商学園(長野)との2回戦ではソロ本塁打を放ち、大舞台での強さを証明。今月に行われた愛媛国体でもアーチをかけ、高校通算本塁打を37本まで伸ばした。「高校に入学して、一番成長したのが心。上のレベルでやるのにも心が必要」と断言。「志望届を出した時点で、指名されても、されなくても、覚悟は決めている」と毅然(きぜん)とした態度を貫く。

 比嘉は下級生時代に、関口清治監督(40)の洗濯係を務めていた。過去には14年にソフトバンクからドラフト1位指名された松本裕樹投手もやっていた出世役だ。「大先輩もやっていて誇らしくなる。ヤクルトの山田哲人さんみたいに、打撃に魅力のある高卒内野手になりたい」。8月には大好きだった祖父武一さんが75歳で亡くなった。「プロ入りは小さい頃からの夢。実現したら、おじいちゃんも喜ぶと思う」と天国にいる祖父への報告を誓った。

 鶴岡東の吉住が「成長」と書き込んだのには理由があった。「鶴岡東に声をかけてもらってなかったら、今の自分はない。野球を続けてよかった」。中学で野球をやめるつもりだった。鶴岡二中では外野手で、投手未経験の吉住を発掘したのが、佐藤俊監督(46)だった。「走る姿が良かったし、身体能力も高かった」。中学卒業前の時点で180センチを超えており、50メートルは6秒0を計測。磨けば光る原石だった。

 高校入学後に投手に転向してから急成長した。1年冬から本格的に筋力トレーニングを始め、2年春には67キロの体重を80キロまで増量。春の県大会では最速145キロをたたき出し、同夏の甲子園1回戦のいなべ総合学園(三重)戦で1回を無失点に抑えた。2年連続の聖地を狙った今夏は3回戦で敗退したが、右上手から豪快に投げ込む最速149キロの直球に評価が高まった。現在は5球団の調査書が届いている。「プロでやらせてもらえるなら、直球を磨いて結果を出せるように」と意気込んだ。

 大曲工の藤井をプロに突き動かしたのは、心の中に芽生えた2文字だった。「進学や社会人も考えてたけど、プロの強打者に“挑戦”してみたかった。緊張よりも楽しみの方が大きい」。高2夏の甲子園では、1回戦で花咲徳栄(埼玉)に敗れはしたが、8回8安打7奪三振5失点で存在感を示した。連覇を狙った今夏は大曲農との3回戦で無安打無失点をマーク。「準決勝で明桜に負けたけど、この夏は自分の投球ができたので、プロでもやりたいと思った」と自信を見せる。

 小5秋から投手一筋で、181センチ、86キロの体格から最速145キロの直球を投げ込む。変化球はカーブ、スライダー、カットボールに決め球のフォークを自在に操り、総合力は高い。「プロの打者はスイングスピードが違う。最初は打たれると思うけど、経験を積んでいきたい」。現在8球団から調査書が届いている。「真っすぐに自信がある。どれだけ通用するか、試してみたい。将来は日本ハム大谷さんみたいな直球を投げたい」。