盛岡大付・三浦瑞は東北福祉大 みちのく球児の進路

盛岡大付・三浦瑞

 みちのくを沸かせた高校球児たちが、巣立ちの季節を迎える。岩手県勢初の3季連続甲子園出場に導いた盛岡大付(岩手)のエース左腕、三浦瑞樹(3年)は東北福祉大(仙台6大学)に進学する。春夏の全国でともに8強入りした男には、ある秘密が隠されていた。書くのも食べるのも右手で、ドッジボールすら右投げ。正真正銘の右利きだが、父実さん(53)に野球を始めた幼少期から右手にグラブをはめさせられ、サウスポーに矯正されていた。春夏の甲子園出場7校と、注目選手の計180人の進路を特集する。【取材・構成=高橋洋平】

 ◆盛岡大付・三浦瑞樹は東北福祉大へ進学

 プロにいくための決断だった。三浦瑞は兄で盛岡大付OBの智聡(4年、西濃運輸内定)がプレーした富士大(岩手、北東北)ではなく、関口清治監督(40)の母校東北福祉大を選んだ。「プロにいくのが一番の目標。いろいろ考えたけど、監督の母校で頑張ってみたかった」。貴重な左投手として2年夏から3季連続で甲子園に導き、チームが戦った10試合のうち9試合に登板。校歌を7度も歌ったが、右利きの自分がなぜ左投手なのか分からずに聖地で投げていた。

 夏の甲子園後に神奈川の自宅に帰省した時、左利き用の小さなグラブが置いてあった。「これ誰の?」と実さんに聞くと、驚きの事実を明かされた。三浦瑞が野球を始めた幼稚園時から使っていたグラブで、まさに「大リーグ養成ギプス」ならぬ「サウスポー矯正グラブ」だった。実さんが意図的にグラブを右手にはめさせ、左投げになるように仕向けていた。

 実さん 4歳離れていた兄の智聡が、当時すでに右投手として育っていたので、末っ子の瑞樹は左投手の方が面白いと思った。左利き用のグラブを右手にはめて、プレーさせたんです。

 三浦瑞は自分が人工的につくられた左投手というのを知らされずに育ち、中学までは左投げ右打ちだった。高校入学後は左肩への死球を避けるために一時左打ちに転向したが、昨春のセンバツ、智弁学園(奈良)との2回戦から元の右打ち(登録は両打ち)に戻した。大学経由でプロを狙える左腕にまで成長した三浦瑞は素直な感想を口にした。

 三浦瑞 左投げじゃなかったら、このメンバーでベンチ入りすら、できなかった。右投げなら並の投手で終わっている。父には感謝している。

 夢は「兄弟プロ」だ。「兄貴が2年後、先にプロになると思う。自分も負けないで4年後、プロになりたい」。最速は現時点で143キロを計測し、武器は沈むチェンジアップだ。「大学では球速を148キロぐらいまで伸ばして、信頼される投手になる」。利き腕じゃない左手で、プロの扉をこじ開ける。

 ◆仙台育英・佐川光明と斎藤育輝も東北福祉大へ

 春夏連続で甲子園に出場した仙台育英(宮城)の佐川光明外野手と斎藤育輝内野手(ともに3年)も、東北福祉大に合格した。2人は楽天にドラフト6位で指名された同期の西巻賢二内野手(18)と同じく身長は170センチよりも小さい。小6では楽天ジュニアで一緒にプレーした。169センチの4番兼投手の佐川は「167センチの賢二は自分よりも背が小さいけど、プロに入った。体の仕組みや使い方を勉強し、大学で鍛えたい」とライバル心を燃やす。

 最近1センチ伸びて166センチとなった斎藤は西巻と二遊間を組み、鉄壁の守備で鳴らした。「背が大きい方が有利なのは確か。自分は背がない分、何かに特化してないといけなかった。それが守備。大学ではパワーを付けて打撃でも信頼されるようになる」と意気込む。

 170センチ未満のプロは、球界最低身長162センチのオリックス育成・坂本一将内野手(27)を始め10人以上いる。斎藤は「大きいから勝つわけじゃないのが、野球の面白いところ。育英で学んだ自主性を生かして、背が大きい選手には負けたくない」と熱く語った。佐川も「4年後、プロの世界で賢二と同じ舞台に立ってみたい」と目を光らせた。身長差の壁を突破し、夢をかなえてみせる。

 ◆仙台育英・杉山拓海は専大へ

 仙台育英の杉山拓海外野手(3年)は専大(東都2部)を選んだ。「OBにお父さん(杉山賢人、西武2軍投手コーチ)がいて、黒田さん(博樹投手、43)もいる。参加した練習会も環境が良かった」。昨夏の甲子園では大阪桐蔭戦で9回2死走者なしから中前打で出塁。その後、ノーサインの二盗から大逆転につなげた。「本能で走った。あの試合は一生の思い出。これから先もこんな感動的な試合はない」と振り返った。