聖光学院、完敗 エース衛藤右肘痛再発で投手陣崩壊

 5年ぶり5度目出場の聖光学院(福島)が、3-12で東海大相模(神奈川)に完敗を喫した。先発した高坂右京(3年)が四死球連発に加えて3点本塁打も浴び、初回途中で6失点KO。2番手登板の上石(あげいし)智也(3年)も2回に3失点するなど、序盤の9失点が重くのしかかった。昨秋の東北大会制覇に貢献した背番号1の衛藤慎也(3年)も右肘痛の影響で起用できず、投手陣が崩壊。夏の甲子園での巻き返しには、投手力の整備が急務となった。

 斎藤智也監督(54)の不安が的中した。序盤の失点も覚悟していたが、想像以上の自滅。高坂の制球が乱れ、本塁打で大量失点KO。上石も勢いを止められない。最大の誤算は、昨年7月に右肘を手術し、ボルトが入ったままだった衛藤の右肘痛が再発したことだ。同監督は目深にかぶっていた青の帽子を脱ぎ、本音を吐露した。

 斎藤監督 野球は投手ありき。状態が良ければ自信を持って試合に入れるけれど、今回は自信があるふりをしていた。紫紺の優勝旗の可能性が限りなく消えていくのを感じながら、この1カ月間は苦しかった。肘にボルトが入った状態での甲子園は初めて。

 エースとしてのフル回転を期待していた衛藤の復活に、奇跡は起きなかった。今冬は肘に負担のかからないフォームを構築。春先は好調だったが、2月中旬の福島・いわき市合宿で痛みが再発した。骨に亀裂。3月の沖縄合宿や、大阪入り後の練習試合でも、多くの球数は投げられなかった。

 23日の東筑(福岡)との開幕戦は本調子ではないまま3回1/3を投げ無失点に抑えたが、限界に達した。東海大相模戦を翌日に控えた26日の練習ではチームを離れ、病院で「衝撃波治療」と呼ばれる除痛治療に専念。同監督は「もう1回手術するしかない」と再手術する意向を示した。試合途中からファウルボールを拾うなど懸命にチームのために尽くした衛藤も「責任を感じていたし、治ると信じていたのですが…。3人の投手でやってきたが、夏は1人で投げるくらいの強さを身に付けたい」。無念の表情の中にも、乗り越える強い気持ちは失っていない。

 打開策は練った。だが、変則左腕高坂の緩急で相手を惑わす作戦は、いきなり崩壊。斎藤監督は「初回から四死球3つだと野球にならないですよね。勝敗が決まってしまった」。10点前後の打ち合いを覚悟していたが、3ランを含む6失点。「負けるならと思った最悪の形」と肩を落とした。

 高坂は「先頭打者の安打で動揺してしまった」。四死球連発からの被弾を反省。3回以降は粘投の上石も「点差を捨てて勝負しろと監督に言われたけれど、東筑戦で打たれたリベンジもできなく、負けて申し訳ない」と大きく息を吐いた。

 12年連続出場に挑む夏まで時間はない。「衛藤が夏までに間に合わないと、甲子園も苦しいけど、福島(県優勝)も苦しくなる」と斎藤監督。目標の日本一へ、危機を脱する手腕に注目だ。【鎌田直秀】