沖学園61年目悲願甲子園 斉藤4連続完投/南福岡

沖学園対九産大九州 優勝した沖学園ナインは歓喜の表情でガッツポーズ(撮影・梅根麻紀)

<高校野球南福岡大会:沖学園1-0九産大九州>◇24日◇決勝◇北九州市民球場

 南北そろって初出場だ! 南福岡では、沖学園が4度目の決勝進出で、悲願の春夏通じて初の甲子園切符を手にした。背番号10の斉藤礼(らい)投手(3年)が、九産大九州打線をわずか2安打の完封勝利。猛暑が続く中、4試合連続完投で優勝の立役者となった。23日の折尾愛真(北福岡)とともに、福岡から2校が出場する100回記念大会は、新たな歴史を刻むチームが全国の大舞台にチャレンジする。

 斉藤は輪の中心にいた。沖学園ナインが次々と、自分のいるマウンドに集まってきた。9回、最後の打者を打ち取ってできた歓喜の輪。1958年(昭33)の学校創立と同時の創部以来、61年目でやっとつかんだ悲願に、我を忘れてはしゃいだ。

 1点リードの6回には2死満塁の大ピンチ。「絶対に1点は取らせない」。最大のヤマを切り抜けると、7回からは走者を1人も許さなかった。「直球を狙っている打者に、変化球でタイミングを外して空振りを取るのが気持ちいい」。カーブ、スライダー、フォーク、シンカー、チェンジアップ。5種類の変化球を駆使して手玉に取った。

 オリックス金子をまねてチェンジアップを覚え、本を読んでシンカーを覚えた。「裁縫も得意だし、自分は手先は器用な方だと思う」。そう言いながら、斉藤は自分の右手を眺めた。猛暑が続く中、今夏全試合に先発し、4回戦から4試合連続完投。「体力には自信がある」。器用な手先と粘り強い体力が学校の歴史を変えた。

 鬼塚佳幸監督(36)は4年前、神村学園(鹿児島)から沖学園の部長に就任。昨年の夏が終わって監督に就任し「苦しかったこともあったけど、選手が頑張ってくれた。学校関係者らの支えがあってここまで来れました」と言うと感極まって声を詰まらせた。神村学園副部長時代は甲子園も経験したが「この子らは意識が低い」とショックを受けた。

 昨年春のセンバツ期間中、バスを片道9時間運転してナインを甲子園に連れて行き「イメージ」させた。今夏大会中、試合前には「眼筋を鍛えるため」と速読トレーニングを導入。西日本短大付戦で打線爆発の結果が出ると、練習前から取り入れるようになった。鬼塚監督は「いろんなことにチャレンジしてきた。みんなから応援してもらえるチームとして甲子園に行きたい」と意気込んだ。

 斉藤 どうすれば楽して投げられるかを研究して変化球を磨いてきた。甲子園では大阪桐蔭とやりたい。

 折尾愛真とともに、南北ともに福岡から新たな歴史を刻むチームが甲子園に乗り込む。メモリアル大会で思う存分暴れるつもりだ。【浦田由紀夫】

 ◆斉藤礼(さいとう・らい)2000年(平12)8月7日、福岡市生まれ。東箱崎小1年から「東箱崎ドルフィンズ」で野球を始める。箱崎中では硬式「糸島ボーイズ」に所属。主に投手を務めた。沖学園では2年夏に背番号10でベンチ入り。自己最速は139キロ。174センチ、67キロ。右投げ右打ち。血液型B。

 ◆沖学園 1958年(昭33)博多商として創立の私立校。87年に現校名。生徒数681人(女子222人)。野球部は58年創部。部員67人。甲子園は春夏通じて初出場。男女ゴルフ部は全国優勝経験あり。主なOBは久保裕也(楽天投手)篠原貴行(DeNA投手コーチ)。所在地は福岡市博多区竹下2の1の33。沖隆邦校長。

◆Vへの足跡◆

2回戦5―1修猷館

3回戦7―3西日本短大付

4回戦12―5九州産

準々決勝4―3東福岡

準決勝8―5福岡大大濠

決勝1―0九産大九州