横浜・万波、半端ない弾で3年連続V/南神奈川

3回表横浜無死二塁、左越えに特大の2点本塁打を放ち雄たけびを上げる万波(撮影・宇治久裕)

<高校野球南神奈川大会:横浜7-3鎌倉学園>◇29日◇決勝◇横浜スタジアム

 第100回全国高校野球選手権大会(8月5日開幕、甲子園)南神奈川大会決勝が行われ、横浜が鎌倉学園を下し、初の3連覇を果たし、18度目の夏の甲子園出場を決めた。4番の万波中正外野手(3年)が、1回に先制の中越え適時二塁打を放ち、3回には左翼席上段に高校通算40号となる2ランで、打線をけん引した。16年にスーパー1年生として鳴り物入りで入学した100回大会の申し子が、名門の主軸として聖地に乗り込む。

 喜びをかみしめるように、ゆっくり歩を進めた。右翼手として試合終了の瞬間を迎えた万波は駆けださず、18秒をかけて歓喜の輪に到達。仲間とハイタッチし「鎌倉学園戦にかける気持ちは、チームの中の誰より強かった。一挙手一投足に、いろんな感情が出たと思います」と振り返った。

 2-0で迎えた3回無死二塁、鎌倉学園・小島の初球、膝元に落ちた変化球を完璧に捉えた。すぐにガッツポーズ。打球は、左中間の最深部に掲げられた看板を直撃した。今大会2本目で、高校通算40号は推定130メートルの特大弾。ベンチに戻るとサッカー日本代表FW本田をまねて、敬礼ポーズで笑みを浮かべた。

 1回1死一、二塁では、中越えの二塁打を放ち、2点を先制した。本来は外野手兼投手だが、この日は初めて一塁手で先発。ファーストミットではなく、慣れ親しんだ外野用グラブで器用にボールをさばき、能力の高さをうかがわせた。

 崖っぷちを知ったからこそ、心から笑えた。野球を始めて以降常にチームの中心だったが、春は不振にあえぎメンバー落ち。「野球人生で、あんなにどん底はなかった」。平田徹監督(35)からは「フォームを自分で作り上げろ」とアドバイスを受け、ノーステップ打法も試みた。バットを振り、動画で確認。またバットを振り…の繰り返し。さらに今年に入って野球部の寮を出て、学校まで1時間以上かかる都内の自宅から通学した。朝は午前5時起きで練習へ。自ら食事面にも配慮するようになり、コンビニでは商品の裏の脂質をチェック。「結果的には、良かったと思う」と壁を乗り越え、成長の手応えをつかんだ。本塁打後、抱擁した監督も「少し頭角を現しつつある。個人より、チームを勝たせたい気持ちが入っている」と評した。

 甲子園へ、物語は続いていく。1年夏はベンチ入りも出場なし。昨夏は初戦秀岳館戦、2打数1安打で敗退した。この日超満員で札止めとなった約3万人の観衆の前で、マイクを向けられ宣言した。「絶対にやってやるという気持ちです。(甲子園に)いろんな強豪校が出てくると思いますけど、一泡吹かせたいと思います」。万波の夏は、万波の高校野球は、これからが本番だ。【保坂恭子】

<万波中正(まんなみ・ちゅうせい)アラカルト>

 ◆生まれ 2000年(平12)4月7日、東京都出身

 ◆球歴 小2で野球を始め、開進二中では東練馬シニアに所属。外野手兼投手で、3年時に全国大会4位。中学時代は陸上部にも所属し、砲丸投げで都大会優勝。

 ◆サイズなど 190センチ、89キロ。50メートル走6秒3、遠投105メートル。右投げ右打ち。

 ◆高校 入学式5日後の4月10日霧が丘戦で初出場。1年春からベンチ入りし、同年夏の3回戦で横浜スタジアムのバックスクリーン看板を直撃する推定135メートル弾。今年の準々決勝立花学園戦でも、再び横浜スタジアムのバックスクリーン直撃の2ランを放った。今大会は通算24打数13安打で5割4分2厘。

 ◆好きな選手 通算630本塁打を放ったメジャー屈指のオールラウンドプレーヤーで、アメリカ野球殿堂入りしている元マリナーズのケン・グリフィーJr。

 ◆食べ物 好きな食べ物は白米、肉。嫌いな食べ物は生魚と魚介類。

 ◆家族 両親と姉。父はコンゴ出身。2歳上の姉アイシャさんも中学時に砲丸投げで全国大会4位に入っている。