聖光学院・矢吹ら大旗白河越えに燃える東北6選手

聖光学院・矢吹栄希内野手(18年7月30日撮影)

 第100回全国高校野球選手権記念大会の組み合わせ抽選会が今日2日に大阪市内で行われ、5日から阪神甲子園球場で開幕する。「みちのくプラス!!」では、悲願の大旗白河越えに燃える6チームから、夏本番で躍動する6選手をピックアップ。聖地での大暴れを期待する。【鎌田直秀、高橋洋平】

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 ▼聖光学院(福島)の支柱は、主将の矢吹栄希内野手(3年)だ。12年連続15度目出場だがチーム唯一、昨夏もベンチ入りして主軸を担った。高校通算28本塁打で、4番須田優真内野手、5番五味卓馬外野手(ともに3年)の22本を上回る長打力と、巧みなバットコントロールを兼ね備えている。

 昨秋の東北大会で初優勝し、日本一を目標に掲げた今春センバツ。東海大相模(神奈川)に3-12と大敗後、夏に向けて結果にこだわるあまりに焦りも生じ、チーム崩壊の危機に陥った。主将として選手会議を重ね、3年生全員で仕事を分担し、仲間との結束を再確認。春の東北大会も制するなど立て直した。矢吹は「みんなの代表として、ぶざまな姿はもう見せられない。優勝とか勝利とかじゃなく、やるべきことを最後にぶっ倒れるくらいやりきるだけ。日本一の挑戦者になります」と完全燃焼する。

 ▼2年連続出場の仙台育英(宮城)は盤石の投手陣が売りだ。先発のエース右腕・田中星流(3年)に続き、2番手で上がる背番号10右腕・大栄陽斗(あきと、2年)が大会を通じて安定していた。古川工との決勝では6回無死満塁のピンチで登板。後続を断ち切って、4回4安打4奪三振無四球で無失点に抑えて優勝を呼び込んだ。「同点までならOKと言われてマウンドに上がったけど、絶対にゼロに抑えようと思った」と自信を見せた。

 須江航監督(35)が率いていた系列の秀光中教校(宮城)では1年時からベンチ入りし、14年の全国中学軟式野球大会優勝を経験。同監督は「中学の頃から一緒にやってきて、苦しい場面を乗り越えてきたので大栄を信じました」と愛弟子をたたえた。持ち味は正確無比の制球力。最速140キロの直球と決め球のスライダーの出し入れで勝負する。

 ▼3年ぶり9度目出場の花巻東(岩手)は最速142キロを誇る2年生右腕・西舘勇陽の完全復活が鍵を握る。盛岡大付との決勝で今夏初登板。今春のセンバツ準々決勝で7失点した大阪桐蔭戦以来の登板で、最速は138キロだったが3回4安打1失点と粘った。9回裏に逆転勝ちしてくれた先輩を前に背番号17は「自分がチームを負けさせてしまうと思っていた」と、試合後は号泣した。

 春は腰痛に苦しみながらも、夏決勝の大一番で復活登板させたのは佐々木洋監督(43)の期待の表れだった。今夏フル回転だった伊藤翼投手(3年)の後の2番手で決勝のマウンドを託したのは「西舘の登板で試合の流れを変えたかった」から。甲子園で勝ち抜くには西舘の力が必ず必要になってくる。同監督は「甲子園の開幕まで調整させれば、簡単に140キロは超える」と自信を見せた。

 ▼15年ぶり2度目出場の羽黒(山形)は、最速148キロを誇る眼鏡の背番号11右腕・佐藤幸弥(3年)が先発で勢いをつける。鶴岡東との決勝では初回に自己最速を2キロ更新して148キロをたたき出した。「甲子園では150キロを出してみせる」と鼻息が荒い。

 抑えの2年生右腕・篠田怜汰が今春から頭角を現し、勝利の方程式が確立された。球威の佐藤、制球の篠田に加え、くせ球の先発左腕・金子摩周(3年)とともに3本柱を形成する。佐藤は「後ろがしっかりしているので、初回からバンバン、腕を振っていける」と仲間の存在を強調。3投手の持ち味を引き出す主将の秋保優大捕手(3年)は「3人もいて頼もしい。自分がしっかりリードすれば勝てる。甲子園でも粘り強くまず1勝」と宣言。佐藤も「甲子園では制球力、変化球をレベルアップして臨む」と眼鏡の奥を光らせた。

 ▼八戸学院光星(青森)の武岡龍世内野手(2年)がついに覚醒した。宿敵青森山田との準決勝では人生初となる2打席連発で3ランをぶちこんだ。「去年は決勝で青森山田に負けて悔しかった。1本目は風に乗った。2本目は手ごたえ十分。大事な場面で打ててよかった」と胸を張った。

 偉大な先輩の巨人坂本勇人に憧れて、徳島から青森へやってきた。1年春の八戸地区大会からベンチ入り。左打ちでのシュアな打撃と堅い守備で遊撃手として先発を経験。ロッテ田村龍弘は武岡と同じ1年の4月デビューで、同じ遊撃手の阪神北條史也は同5月からの出場だった。11年夏から3季連続全国準優勝を支えた2人に並ぶ可能性を秘めていたが、その後定位置をつかみきれず、今夏ついに開花させた。「甲子園は夢の場所。勝って全国制覇したい」と堂々と宣言した。

 ▼11年ぶり6度目出場の金足農(秋田)を引っ張るのが、最速150キロ右腕・吉田輝星(3年)だ。県大会初戦で自己最速を3キロ更新するなど、まだまだ成長中だが「甲子園では150キロにこだわらず、打たせてとる投球で、勝てる投手になることが最優先」。スライダーやカットボールも操って全5試合計636球完投した投球術を、大舞台でも再現する。

 U18日本代表候補にも選出され、日の丸をつけてプレーする夢も現実味を帯びてきた。中日、巨人などで活躍した専大北上(岩手)中尾孝義監督(62)から今春の東北大会対戦時に、制球、フィールディング、けん制などの総合力を「桑田2世」と称された。甲子園では84年に同校が桑田、清原を擁するPL学園(大阪)を苦しめて準決勝敗退した4強超えが最初の目標。東北NO・1から日本のエースに名乗りを上げる。