佐賀商・木村初戦敗退も涙なし「プロでもう1度」

佐賀商対高岡商 高岡商に敗れグラウンドの土を集める小柳(左)ら佐賀商ナイン(撮影・加藤哉)

<全国高校野球選手権:高岡商4-1佐賀商>◇7日◇1回戦

 すがすがしかった。佐賀商主将のエース木村の表情は、敗戦投手らしくなかった。「最後は甲子園で終われて良かった。今までで一番いい投球ができた」。涙はない。初戦敗退したが、あこがれだった甲子園で最高の投球ができたことがうれしかった。

 甲子園1球目は143キロの直球で空振りを奪った。「走っている」。聖地の力を感じた右腕は腕を振り続けた。6回までわずか2安打1失点。「右足にしっかり体重が乗っていた」と8三振を奪った。同点に追いついた直後の7回裏、味方の失策などもあり3安打を許し3失点。「すごい打線でした」。5回の被弾は141キロ低めの直球。7回の2点適時二塁打も145キロ直球だった。「球が浮いてしまった。真ん中高めだった」。悔いは残るが、自分の力は十分に出せた。自己最速を1キロ更新する146キロも聖地でマークした。

 前日6日に同じ佐賀出身の大阪桐蔭・柿木蓮投手(3年)が好投を見せた。「自分も負けられないと思った」。1年生からベンチに入り、新チームから主将としてチームを引っ張ってきた。森田剛史監督(46)も「6月までどうしようもなくバラバラのチームだったが木村がまとめてくれた。いい投球だった」と大黒柱をねぎらった。

 甲子園の土は持ち帰らなかった。卒業後は大学進学希望だが「将来、プロに入って、もう1度ここ(甲子園)に戻ってきたい」。聖地でこの上ない自信を手にした右腕が、さらに大きくなってマウンドの土を踏む。【浦田由紀夫】