馬淵監督的中か桐蔭刺客1番手!創志学園・西16K

完封勝利した創志学園・西は右腕を上げガッツポーズ(撮影・滝沢徹郎)

<全国高校野球選手権:創志学園7-0創成館>◇9日◇1回戦

 名将の予言的中! 第100回全国高校野球選手権大会は1回戦4試合が行われ、創志学園(岡山)が快勝発進した。2年生の西純矢投手が、甲子園初登板で最速149キロをマークし、毎回の16奪三振。優勝候補の一角だったセンバツ8強の創成館(長崎)を完封し、夏初勝利に導いた。明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督(62)は大阪桐蔭の進撃を止める筆頭候補に同校を挙げていたが、期待に応える内容。ともに勝ち上がれば、佳境の準決勝以降で激突する。

 名将・馬淵監督の眼力を証明する投球だ。勝利の瞬間、西は懸命に振り続けた右手でこぶしを作り、ゆっくりと空に掲げた。

 鮮烈な聖地デビューになった。気迫を前面に押し出し、帽子を何度も落としながら、センバツ8強の創成館打線に立ち向かった。直球は149キロをマーク。3種類のスライダーを使い分け、毎回の16奪三振。4回から6者連続三振を奪うなど圧倒し、4安打無四死球の完封。昨秋の明治神宮野球大会で大阪桐蔭を破った強豪に、三塁を踏ませなかった。

 創志学園の躍進を予言した人がいる。6日、ラジオ解説で甲子園を訪れた明徳義塾の馬淵監督。甲子園春夏50勝のベテラン監督は「夏は分からんよ。(大阪桐蔭を)倒すなら創志学園という声も聞いた。めちゃくちゃ打つよ。投手も150キロ投げるし」と史上初の2度目の甲子園春夏連覇を狙う横綱を止める筆頭候補に挙げていた。

 広島出身。オリックス西勇輝を親戚に持つ。幼い頃、父雅和さんに連れられたカープの試合で野球の楽しさを知った。昨年10月に病で父を亡くした。「甲子園に行ってくれ」。託された願いを胸に、夏切符をつかみ取った。

 おしりのポケットには茶色と黒の数珠が入っている。長沢宏行監督(65)が渡したもので、岡山大会決勝の時も般若心経を唱えながら託された。「お守り代わりです」と大事に持つ西は「長男の自分が一番上になって、責任感がついた。野球にもつながっている」。長沢監督は「あれだけいいピッチングをするとは。ほめるしかない。お父さんを亡くしたことが人間的にも成長させ、投球にもつながったと思う。おじいさん代わりに育ててあげたい。お父さんにはなれないので」と見守る。

 初回のマウンドに立つと、いつも空を見上げる。甲子園の空を見上げ「あこがれの場所でいつも以上の力が出た」と三振の山を築いた。雅和さんにも「空から自分のピッチングを見てくれていたら」と祈った。「この大会が終わってからお墓に行って報告したいです」。悲しみを乗り越えたエースが、父の思いとともに100回大会の頂点へ。圧倒的なデビューは夏の球史に刻まれた。【鶴屋健太】

 ◆1試合16奪三振 15年の成田翔(秋田商=現ロッテ)が龍谷戦で16個を奪って以来。延長戦を含め9回までに16個以上は、74年の金属バット採用後13人目(16度目)。2年生は12年松井裕樹(桐光学園=現楽天)以来。

 ◆毎回奪三振 昨年の広陵が準決勝の天理戦で継投で記録して以来で通算91度目。

 ◆西純矢(にし・じゅんや)2001年(平13)9月13日、広島県生まれ。小学2年から鈴が峰レッズで軟式野球を始め、阿品台(あじなだい)中ではヤング広島に所属。中学2年夏に全国優勝。同3年時にNOMOジャパンに選出された。創志学園では1年春からベンチ入り。2年春から背番号1を背負う。今年はU18日本代表の第1次候補にも選ばれている。最速150キロ。通算9本塁打。遠投120メートル。50メートル6・0秒。184センチ、79キロ。胸囲90センチ。右投げ右打ち。好きな言葉は「栄光に近道なし」。