横浜、花咲徳栄の連覇阻止 松坂Vの時と同じ粘り

横浜対花咲徳栄 9回裏花咲徳栄2死満塁、最後の打者を空振り三振に仕留め、雄たけびを上げる横浜・黒須(撮影・前田充)

<全国高校野球選手権:横浜8-6花咲徳栄>◇14日◇2回戦

 横浜は負けない。第100回全国高校野球選手権大会は14日、甲子園球場で3試合が行われ、横浜(南神奈川)が昨夏覇者の花咲徳栄(北埼玉)を8-6で下した。9回裏、猛反撃で2点差に迫られ、なおも2死満塁のピンチを3番手の黒須大誠投手(2年)がしのいだ。98年夏、松坂大輔(現中日)を擁して優勝した時と同じような粘りを発揮。次戦はプロ注目、吉田輝星投手(3年)の金足農(秋田)と対戦する。

 20年ぶりの夏優勝を目指す横浜が、辛くも逃げ切った。9回裏。2点差に詰め寄られなおも2死満塁。黒須は、フルカウントから内角直球を投げた…つもりが、引っ掛かって外角へワンバウンドになった。「振ってくれ!」。願い通り、当たっている7番井上のバットが空を切った。「何が起こったのか分からなかった」。整列し、校歌を聞く間も、2年生右腕の足はガタガタと震えていた。

 タレントぞろいの横浜だからこそ、昨夏優勝校を振り切れた。黒須は、先発した152キロ左腕の及川、エース板川に続く3番手投手。及川が2被弾、板川も打たれ、マウンドに上がった。9回は4四死球に暴投、不運な内野安打などでピンチを招いたが、何とか2点で踏ん張った。平田徹監督(35)は「もう腹をくくるしかないと。選手を信じて縮こまらないように。ひるまず内角を攻めてくれました」と振り返った。黒須は「とにかく腕を振って気持ちを前面に出そうと思った」。疲労度マックスの顔で笑った。

 4回のビッグイニングは伏兵の一打だった。自称「脇役」の2番河原木は3回の同点打に続く、2点適時打。本職は捕手だが、活路を見いだすため今春から未経験の外野手になった。平田監督に「練習の虫。かがみのような選手」と称され、代打で結果を出してスタメンをもぎ取った。6月に左頬へ死球を受け骨折した時も「この夏はよく当たる! ラッキーボーイ」と笑い飛ばしたムードメーカー。「頑張ってきたことが間違っていなかった。有頂天です!」と笑った。

 スタンドには98年夏の決勝、京都成章戦で本塁打を放った松本勉さん(37)がいた。仕事で、20年ぶりに甲子園へやってきた。「チームワークのいいところは当時と同じですね」と後輩を見つめた。投手陣の計算が狂っても、ドラフト候補の4番万波が無安打でも勝つ。平田監督は「(最大)7点差あったが絶対に粘ってくると思った。去年のチャンピオンに、苦しい試合をして最後に勝った。大きな収穫」とうなずいた。【和田美保】

 ◆黒須大誠(くろす・たいせい)2001年(平13)5月30日、福島県生まれ。小学校時にマツザキガーデンジュニアスポーツ団に所属し投手。中央台北中ではいわきボーイズで全国4強。横浜では1年春からベンチ入り。50メートル6秒4、遠投95メートル。188センチ、78キロ。右投げ右打ち。

 ◆横浜の連覇阻止 横浜が昨年Vの花咲徳栄に勝利。横浜の夏連覇阻止は愛甲猛投手らの80年、準々決勝で箕島に3-2で勝って以来38年ぶり2度目。

 ◆記念大会の横浜

 80回大会(98年) 松坂大輔(現中日)を擁して春夏連覇を達成。準々決勝でPL学園との延長17回の死闘を制すと、準決勝の明徳義塾戦は6点差をはね返し逆転サヨナラ勝ち。決勝では松坂が京都成章相手にノーヒットノーランで締めた。

 90回大会(08年) 投手の土屋健二(元DeNA)や倉本寿彦、2年生の筒香嘉智(ともに現DeNA)が中心。筒香は準々決勝の聖光学院戦で2ランと満塁弾と2打席連続本塁打を放ち、大会最多タイの8打点を記録。準決勝では優勝した大阪桐蔭に敗れ4強。