侍ポーズ!金足農・吉田輝星2戦連続の2ケタ三振

金足農対大垣日大 帽子を飛ばしながら力投する金足農の吉田(撮影・横山健太)

<全国高校野球選手権:金足農6-3大垣日大>◇14日◇2回戦

 侍右腕が斬りまくった。金足農(秋田)吉田輝星(こうせい)投手(3年)がチームを23年ぶりの3回戦進出に導いた。大垣日大(岐阜)を9回6安打3失点。5番大友朝陽外野手(3年)の本塁打で勝ち越した直後の8回からギアを上げ、13奪三振。154球の力投だった。初回と9回の投球前に、右膝を地面に付けて刀を抜く「侍ポーズ」がルーティン。一緒にポーズをする「侍仲間」の大友の1発に燃えた。3回戦は横浜(南神奈川)と激突する。

 仲間の1発を見届けた瞬間、ベンチ前にいた吉田は右拳を強く握り締め、ガッツポーズを繰り出した。勝ち越した直後の8回。既に127球も投げていた疲れを吹き飛ばし、3段階のギアを一気に上げた。キレを取り戻した直球で3者連続見逃し三振。甲子園の2戦で311球を1人で投げ抜き、マウンドでほえまくった。

 「大友の1発で目が覚めた。点数取った後のギアは全開だった。一緒に冬にきつい練習をしてきた仲間なんで。自分がへばったら駄目。自分だけのチームじゃない」

 高い修正能力で立て直した。相手打線に直球を狙われ、3回までに3失点。4回以降は相手の狙いを外す120キロ台のスライダーを多投した。ギアを上げた9回には自己最速にあと1キロと迫る149キロを3球続けた。「いい感じに疲れがたまって、力が抜けて勝手に一番いい球がいった」と振り返った。

 この日、大友の1発で吉田が一気に息を吹き返したのには、理由があった。吉田と中堅手の大友は大の仲良し。初回と9回に右膝を地面につけて刀を抜く「侍ポーズ」を行うルーティンを甲子園でも貫いている。吉田は意図を明かした。

 「最初は遊びで始めた。試合の感じで気張っていくと、いいパフォーマンスができない。気楽に行こうと。自分も楽しい方の人間。“侍仲間”が打ってくれた。一番喜びが大きかった」

 大友とは普段から侍をキーワードにしたゲームで盛り上がる。そのゲームでは侍が刀を抜く「シャキーン」ポーズが存在し、無類の侍好きの吉田は甲子園用のグラブに「シャキーン」と刺しゅう。実際にU18日本代表候補に選ばれており「侍に選ばれてもやりたい」と宣言した。

 今大会唯一の公立農業高校が9人野球で3回戦に進出し、相手は優勝経験のある横浜に決まった。吉田は「これから厳しい戦いになる。初回から全開で体力を使い切るぐらいで投げないと」と意気込む。「秋田の剛腕侍」吉田が名門横浜を、侍のごとくぶった斬る。【高橋洋平】

 ◆金足農・吉田が鹿児島実戦(14奪三振)に次いで13奪三振。2試合連続で13奪三振以上は、12年藤浪晋太郎(大阪桐蔭)が2回戦14個→準々決勝13個(3回戦は登板なし)と続けて以来6年ぶり。連続13個以上を奪った公立高校の投手は、58年板東英二(徳島商)が2回戦17個→3回戦15個→準々決勝25個(延長18回)と続けて以来60年ぶりとなった。