創志学園・西「審判と勝負」亡き父誕生日祝えず涙

下関国際対創志学園 9回表下関国際無死一、三塁、佐本に勝ち越し犠飛を許した西は、本塁カバーに入りながら悔しがる(撮影・浅見桂子)

<全国高校野球選手権:下関国際5-4創志学園>◇15日◇2回戦

 泣いた。第100回全国高校野球選手権で、大会屈指の好投手として注目された創志学園(岡山)・西純矢投手(2年)が9回に逆転され敗戦。人目をはばからず号泣した。闘志あふれるスタイルの右腕は、マウンドでの派手なガッツポーズを球審に注意される場面もあり、9四死球で自滅。待球作戦で終盤勝負をしかけた下関国際(山口)の前に力尽きた。この日、4試合が行われ、16強が出そろった。

 あふれる涙を何度もぬぐい、天を仰いだ。創志学園・西は「自分のリズムで投球ができなかった。気持ちで負けた」とぽつり。気迫が持ち味の2年生エースが、弱気になったことを悔いた。

 初回、先頭の浜松から見逃し三振を奪うとガッツポーズ。3者凡退に抑えた直後、球審に呼び止められた。「ベンチに戻る途中に主審から『必要以上にガッツポーズをしないで。試合のテンポを速くするために、早くプレートに入りなさい』と言われました」。2回、3回にも球審だけでなく二塁塁審からも注意を受けた。8回に4番鶴田を三振に仕留めた場面では「強い口調で言われた。自然と出たんですけど…」と戸惑った。

 投球中に気持ちが前面に出るスタイルの右腕は、ピンチを切り抜けると背中をそらせてのガッツポーズや雄たけびが自然と出る。ただ、意図した行為ではなくても、過剰なアクションが相手への敬意を欠き、スムーズな試合進行の妨げになると球審に判断された。西は「(打者ではなく)審判と勝負してしまった。気持ちのあせりが態度に出てしまった」と唇をかんだ。

 9日の創成館(長崎)戦は、毎回の16三振を奪い、無四死球完封。100回記念大会注目の右腕として一躍脚光を浴びたが、この日は9四死球と制球に苦しんだ。2点リードで迎えた9回。連続四死球でピンチを招き、無死満塁から暴投で1点を献上。そこから適時打と犠飛で逆転を許した。初戦とは別人のような姿に、長沢宏行監督(65)は「あれが2年生でしょう。勉強しなければだめ」と、あえて厳しい言葉でエースの成長を願った。

 西にとって、この日は特別な1日だった。昨年10月に45歳の若さで亡くなった父雅和さんの誕生日。「父を喜ばせようと思ってマウンドに上がったが、自分のピッチングができなくて申し訳ない」と悔しさをにじませた。

 聖地の土は持ち帰らなかった。「いい思いもして、怖い思いもした。来年ここに戻ってきて今年の借りを返したい」。天国と地獄を味わった甲子園。今度は真のエースとして帰ってくる。【鶴屋健太】