大阪桐蔭・中川ベース昨夏踏み損ねの悪夢に決別V打

3回裏大阪桐蔭1死一、二塁、中川は左中間に逆転の2点適時二塁打を放つ(撮影・宮崎幸一)

<全国高校野球選手権:大阪桐蔭3-1高岡商>◇16日◇3回戦

 第100回全国高校野球選手権大会で2度目の甲子園春夏連覇を目指す大阪桐蔭(北大阪)が、高岡商(富山)相手に「3回戦の悪夢」を振り払い8強進出を決めた。1点を追う3回、主将の中川卓也内野手(3年)の適時二塁打で逆転。昨夏、同じ3回戦で9回2死までリードしながら、中川が一塁を踏み損ねたミスからサヨナラ負けした悔しさを晴らした。18日の準々決勝は強豪の浦和学院(南埼玉)とぶつかる。

 勝利まであと1アウト。粘りを見せる高岡商を後押しするような拍手と大歓声に、大阪桐蔭ナインはマウンドへ集まった。

 「去年みたいやな」

 「去年の二の舞いにはならないぞ!」

 ナインはもう1度気合を入れ直した。最後は、柿木が122キロのスライダーで空振り三振。「去年似たような経験があったから、しっかり落ち着いてできた。あの経験があったから勝てました、と先輩方に伝えたいです」。主将中川を中心に1つになって乗り越えた。

 昨夏は仙台育英戦であと1死が奪えず、サヨナラ負けで甲子園の春夏連覇が途絶えた。夕闇が迫る第4試合の3回戦、そして一塁側ベンチ。全く同じシチュエーションに、西谷浩一監督(48)ですら「野球の神様が試しているんだと思った」と頭をよぎるほどだった。だが勝利という結末だけが去年と180度違った。

 中川は悪夢を自らのバットでぬぐい去った。1点を追う3回1死一、二塁、「勝手に体が反応しました」と左中間へ逆転の2点適時二塁打を放った。昨夏も3回戦で先制適時打を放ったが、勝利で試合終了と思われた9回2死で、遊ゴロの送球を受けた際、一塁を踏み損ねセーフ。チームはそこから暗転した。悔し涙にくれたあの日から1年、意地でリベンジを決めた。

 無安打に終わった作新学院との初戦後は苦しんでいた。何をしてもうまくいかない、バットを握りたくないとさえ思った。そんな中川に声をかけたのは、西谷監督だった。「お前が作ってきたチーム。何三振しても代えないぞ!」。こみ上げる涙をこらえると、気持ちがすっと楽になった。

 前日のミーティング。中川はナインに言った。「去年は大きな壁を乗り越えられなかった。今年は乗り越えよう」。昨夏の敗戦がふとした時に頭をよぎることもある。「あの日を忘れたことは1度もないです」。1アウト、1プレー、1球の重みを胸に3回戦の壁を突破した。春夏連覇まであと3つ。18日の浦和学院戦も全力でぶつかる。【磯綾乃】

 ◆中川の一塁踏み損ね 17年夏の甲子園3回戦で、大阪桐蔭は仙台育英と対戦し、1-0で迎えた9回裏の守り。2死一、二塁で仙台育英若山の打球は平凡な遊撃へのゴロとなり、一塁の中川へ送球。タイミングは完全にアウトだったが、中川の足が一塁から離れており、判定はセーフ。試合終了どころか2死満塁とピンチは拡大。続く馬目に逆転のサヨナラ中越え二塁打を打たれ、大阪桐蔭の2度目の春夏連覇は消えた。