金足農・吉田、連投支える「肩甲骨」と「聞く耳」

バスケットボールのシュートのような動きで肩甲骨付近や肘、肩を柔らかくする金足農・吉田(撮影・鎌田直秀)

<全国高校野球選手権:金足農2-1日大三>◇20日◇準決勝

 秋田大会から全10戦完投、1385球。金足農エース右腕・吉田輝星の底知れぬスタミナには、2つの理由がある。「肩甲骨の可動域の広さ」と「聞く耳を持つ柔軟性」。昨夏、昨秋と、秋田県大会終盤に消耗して敗れたのを機に、野球以外からも情報収集。新たなルーティン完成が、甲子園での連投を支えている。

 練習序盤。吉田は外野の芝生で、硬式球を手に、腕をグルグル回す。しかも野球の上投げとは逆回り、ソフトボール投法の1つ「ウインドミル投法」だ。ソフトボール女子日本代表・上野由岐子投手のような豪快なフォームだ。「これをやると肩甲骨の可動域が広がると教えてもらった。試したら、すごく楽に腕が振れるようになったし、肩への負担も軽くなった気がしています」と吉田。最初はうまく投げることができなかったが、1週間足らずで投法を習得し、周囲を驚かせた。右太ももに右肘付近を当てて手首に勢いをつけるため、肘や手首の柔軟性アップにもつながっている。

 続いて「バスケットボール」でフリースローを放つかのように、硬式球を高々と放る。膝を曲げて力をため、腰→肩甲骨→肩→肘→手首→指先と力を伝える感覚を研ぎ澄ます。「格好は良くないんですけれど、全身を使ってやらないと遠くには飛ばない。ボールに力を伝える感覚みたいな感じですかね」と説明した。

 昨夏の秋田大会決勝で2年生エースとして敗退。新チームになっても昨秋の同準々決勝で4-0の8回に一挙5点の逆転負け。いずれも大会終盤にスタミナが切れた、苦く悔しい思い出がきっかけだった。

 エース=完投勝利。理想を突き詰めるために、奔走した。中泉一豊監督(45)、コーチ陣、OB、仲間。他部の同級生などにも意見を聞いて、継続して力を使い続けられる術を模索した。仕入れたアイデアを試験的に実践し、合わなければやめるの繰り返し。出会ったのが「ソフトボール」「バスケットボール」だった。菅原天城コーチ(42)も「いつのまにか始めていた。あれもスタミナに不安がなくなった1つかもしれませんね」と分析した。

 遠投では控え投手の関悠人(2年)が相手役。相手を固定することで、日々の違いを敏感に感じ取れる。関は「吉田さんからは、はっきり言ってくれと」と遠慮のない指摘を心掛ける。約70メートルの遠投で球の回転、伸び、キレを確認。「たまにシュート回転したり、伸びて来なかったりするんです。ちゃんと伝えると肘の高さを調整したり、フォームを変えています」。整えてからブルペンへ。同級生はもちろん、後輩の助言もすべて吸収する。

 聞く耳を持って、貪欲に探求し、完成した「ランニング→ソフトボール→バスケットボール→遠投→ブルペン」のルーティンが、吉田の疲労蓄積を軽減している。【鎌田直秀】