U18藤原にため息「プロがいるのかと…」規格外14発

トスバッティングで汗を流す藤原(撮影・上田博志)

プロ顔負けの飛距離を見せつけた。U18(18歳以下)アジア選手権(9月3日開幕、宮崎)に出場する高校日本代表が30日、KIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎で練習した。今秋ドラフト1位候補の大阪桐蔭・藤原恭大外野手(3年)が、フリー打撃で69スイング中14本の柵越え。本塁打が出にくい同球場で規格外のパワーを証明した。31日は宮崎県高校選抜との壮行試合が行われ、金足農・吉田輝星投手(3年)が登板する。

宮崎の青空に「ドカーン」と衝撃音が響いた。藤原がはじき返した69球中14球が柵越えし、外野の座席や地面で大きく跳ねた。関係者が「プロがいるのかと思った」と漏らした冗談が本気に聞こえる強いスイング。「結構いい感じで修正できた」。修正の過程で残した数字に周囲を驚かせた。

両翼100メートルのサイズ。海辺で風の影響を受けやすい立地。巨人がキャンプを張るこの球場は、本物にしか柵越えの量産を許してくれない。2月は調整段階で巨人の選手と単純比較するのは難しいが、約5スイングに1本はプロの中軸と比較しても遜色ないペース。飛距離も申し分なく「かなり広いですね」と言いながら、右翼席中段へポンポンと放り込んだ。

志願し、振り込んだ。過去の実戦3戦は計3安打。安打は出ても、内容には不安を残した。25日の合宿開始からオフがなく、30分で練習を終える予定だったが「まだまだ下手くそですし。練習しないと(感覚が)狂ってしまって」。永田裕治監督(54)にフリー打撃を直訴した。修正ポイントを確認し、チームメートより倍近い数を消化した。

仲間と過ごす日々で、新たな引き出しも増えた。同部屋で、順番に打った浦和学院・蛭間から「フォースタンス理論」の話を聞いた。両者は今夏の甲子園の準々決勝で対戦。同戦で放った本塁打のように「いい時は後ろ。悪い時は前で打っている」と指摘された。「今日試したら、はまった」と自分に適した体の使い方も覚えた。

宮崎県高校選抜との壮行試合に出場する。打順は4番か1番か。キーマンに変わりはない。「勝つのは当たり前ですが、今日の打撃がどこまで実戦で通用するか。大事な1日。明日はアウトOKくらいの気持ちで、持ち味のフルスイングをしたいです」。チームをアジア連覇に導くために、見つけたテーマを実践する。【久保賢吾】

◆KIRISHIMAサンマリンの柵越え 両翼100メートルと広い上に、ポール際が吹き抜けとなっていて風が通りやすい構造。キャンプの時期は右翼→左翼への北西の風が多く、左打者は特に柵越えが難しい。この日は逆向きの風で、右打者の打球は押し込まれていた。巨人阿部は新人の01年、初のフリー打撃では61スイングで柵越え1発。それでも、当時の長嶋監督を「いいバッターだなあ」とうならせた。2年後の03年は111スイング中40本と驚異的な数字を残している。長野は10年、プロ初のフリー打撃は43スイング中3本の柵越えだった。日本ハム中田は13年、WBC日本代表合宿で56スイングで柵越え9発。侍ジャパンの中でも飛距離が目立った。