再出発だNEW金足農 甲子園の経験「生かします」

新チームでの活躍を誓う金足農の選手たち(撮影・鎌田直秀)

秋季高校野球秋田県大会(15日開幕)の組み合わせ抽選会が12日、秋田市内で行われ、今夏の甲子園で準優勝した金足農は、16日の初戦(2回戦)で大館桂桜と対戦することが決まった。1日に行った新チーム初の練習試合では、同じく甲子園出場の羽黒(山形)に1-21と大敗。三塁コーチとして「カナノウ旋風」を支えた新主将の船木弦外野手(2年)は、全力で3年生を支えた経験と屈辱の黒星発進を土台に、新たなカナノウ野球を積み上げることを誓った。

金足農グラウンドのホワイトボードに、2つの言葉が書かれた。黒い字で「目標 全てにおいて全力でやる」。赤い字で「初試合忘れない 対羽黒21-1」。8月21日に甲子園決勝を終え、翌22日に秋田へ帰郷。県勢103年ぶりの準優勝によるカナノウフィーバーで、新チームの準備期間は、ほとんどなかった。新主将もなかなか決まらず、正式決定は今週になってから。就任した船木主将は「すべてのプレーにおいて、全力でやることを見直そうと、みんなで話した。自分たちの実力の現状が、羽黒戦のスコアだと思う。これから始まることは難しいと思うが、プレッシャーより楽しみな気持ちのほうが大きい」と前を向いた。

今夏、9人が甲子園を経験した。だが、1試合も出場はなし。鹿児島実との1回戦前日、船木を中心に「出られなくても全力でサポートすることは出場することと同じ。日本一のサポートをしよう」と誓い合った。甲子園期間中、打撃練習をすることも1度もなかった。「3年生には良い経験をさせてもらって感謝しています。生かさないと強くはなれない。どんな強豪にも向かっていく気迫、姿勢が一番大事だと教わった」と収穫も大きかった。

再発進に向け、1、2年生全員でテレビや新聞を遠のけ、フィーバーからあえて目を背けた。「ニュースを見てしまうと浮かれてしまう部員もいると思った。一番近くで甲子園決勝の敗戦も覚えている。それだけでいい」。練習での集中力、私生活から家での過ごし方、着替えも迅速に行う時間の有効活用。「自分たちの自覚はまだ甘い。でも3年生たちが実行してきた甲子園基準を設定してやらないと強くはなれない」と、厳しく律する。

昨夏にスタンドで味わった秋田県大会決勝での敗戦。今夏の甲子園決勝で大阪桐蔭に大敗。そして「9人野球」と称賛された裏で、レギュラーになれなかった悔しさ。「全国の高校生で一番悔しい思いをしたのは自分たち。甲子園で優勝することだけがすべてじゃないとは思う。優勝に値するようなチームになることが一番大事なことだと思う」と力を込めた。

練習試合は羽黒とのダブルヘッダーのみ。基礎から見つめ直してきた。実戦経験のない新チームにとっては、16日の大館桂桜戦が、ぶっつけ本番と同様。吉田輝星投手(3年)をグラウンド内外でサポートし続けてきた関悠人投手(2年)と、吉田の球を受け続けてきた沢石和也捕手(2年)が新バッテリーとなりそうだ。地元だけでなく、全国の野球ファンが、秋田県連覇やセンバツ出場を期待する。「チャレンジ精神の日本一になることが最優先」と船木は決意。カナノウの新たな挑戦が、いよいよ始まる。【鎌田直秀】