元女子校の目白研心が日大三撃破、修学旅行延期実る

目白研心対日大三 試合に敗れた日大三ナイン(奥)は悔しい表情で整列に向かう(撮影・久永壮真)

<高校野球秋季東京大会:目白研心7-5日大三>◇1回戦◇8日◇小野路野球場

ジャイアント・キリングだ! 創部10年目の目白研心が、秋季高校野球東京都大会の1回戦で、来春センバツの優勝候補と目されていた日大三を破った。4番山田瑞記捕手(2年)が1回の第1打席で無死満塁から走者一掃の適時二塁打を放てば、5回の第3打席でも左翼スタンドへ高校通算3号3ラン。4打数2安打1本塁打6打点の活躍でチームを勝利に導いた。ミラクルチームは次戦13日、日本ウェルネスと神宮第2で対戦する。

試合終了の瞬間、空席なくぎっしり入った日大三スタンドの重い空気とは対照的に、目白研心スタンドには空席の間を駆け回り喜ぶ保護者の姿があった。7回から漂い始めた「まさか勝つんじゃない?」という選手の母親たちの期待が現実になった。

試合を決めた1発は5回2死一、二塁。1ボールからの2球目だった。4番山田瑞が内角の甘く入ったスライダーを左翼ポール際へ。フェンスを越えると球場が揺れるように沸いた。「うまく芯に当たって飛んでくれました。今もこれが現実なのかよく分かっていません」。鼻の下を伸ばすようにして、不思議がるような表情で話した。

創部10年目のチーム。これまで秋季大会は地区予選で負け続け、本大会に出場したのは16年の1度のみ。それも初戦敗退だった。新チームになり「目白研心の歴史を塗り替えよう」を合言葉に練習に取り組んできた。「抽選で(日大三の)横を引いた時から、勝つ気持ちはあった。世間は『絶対負ける』と思っているから、それを覆してやろうと練習してきました」。

その思いが強く、学校行事最大のイベントにも遅れて参加する決意をした。8日からクラスメートは長崎へ修学旅行に出かけている。野球部は今日9日、鈴木淳史監督(36)の引率で長崎へ向かうことに。「本当に行かなくてよかったですよ」と破顔一笑した。

今年5月30日から、学校のグラウンドで改修工事が行われるなど十分な練習を行えない環境にある。そんな中でも体育館で基礎体力トレーニングをするなど、今できる全力を尽くしてきた。一番近くで見てきた鈴木監督は「選手たちは、落ち着いてやっていた。今日は持っている100%の力を出してくれた」と選手をたたえた。

日大三に勝ったことで、都大会を勝ち抜いてのセンバツ出場への期待もふくらむが、山田瑞は「今日の試合でも課題は見つかった。1つずつ克服したい」と気を緩めない。まだまだ発展途上のチーム。この日の大番狂わせを成長の糧とする。【久永壮真】

◆目白研心 1923年(大12)創立の私立校。当初は女子校で09年から男女共学に。野球部も同年に創部。生徒数は911人(女子620人)。甲子園出場歴なし。主なOBはモデルで女優の中村アンら。所在地は新宿区中落合4の31の1。松下秀房校長。

◆日大三 1929年(昭4)創立の私立校。野球部も同年に創部。生徒数は1097人(女子381人)。甲子園出場は春20度、夏は17度。全国優勝は春1回、夏2回。主なOBは元ヤクルト監督関根潤三、阪神高山俊、元F1レーサー片山右京、落語家立川志らく。所在地は町田市図師町11の2375。新井勇治校長。