社の剛腕・藤本、受け継ぐぞ「兵庫公立の星」

来秋ドラフト候補、社・藤本竜輝投手(撮影・磯綾乃)

<高校野球NOW>

シーズンオフ企画の金曜日「高校野球NOW」の第4回は、来秋ドラフト候補に挙がる社(兵庫)の藤本竜輝投手(2年)。プロスカウト陣から熱視線を浴びる最速147キロ右腕。毎年公立校から好投手を輩出する兵庫県で、新たな「公立の星」になりそうです。

社の剛腕が「兵庫の公立の星」の系譜を継ぐ。須磨翔風から16年ドラフト3位で指名された阪神才木、市西宮から昨年ドラフト6位で指名された中日山本拓ら、兵庫の公立校から毎年多くの好投手が育つ。今年注目されるのが社・藤本だ。視察を続けるプロスカウトの中では「関西圏の投手の目玉」との声も上がる。

がっちりとした体から繰り出す剛球は現在最速147キロ。「三振にこだわりがあります」と、1試合最多15三振を奪ったこともある。入学時67キロだった体重は現在74キロ。球速は17キロもアップした。体重はさらに2~3キロ増を目標にし、球速も150キロの大台を目指している。

自宅は高校のすぐ目の前。練習を見に行っていたこともあり、中学時代から「社高校の体育科」に憧れていた。地元のケーブルテレビでは、体育祭の様子が放映され、きびきびと一糸乱れぬ「集団行動」にひかれた。入学後、高校1年の冬は腰の分離症になった。思うように練習はできなかったが約2カ月、体幹トレーニングに励み、基礎を作った。

「体育科」であることも成長を後押しした。陸上競技、跳び箱、柔道、バレーボール…。多くの実技が授業にあり「陸上では体の使い方が分かった。走り幅跳びでは走り方とか、足の使い方を教えてくれました」。すべてが野球につながっている。

社では現在プロ野球界でも使われる、投げるだけで回転数や速度が分かる装置が搭載されたボールを使う。数値で分かることで、選手それぞれが目指す目標が分かりやすくなる。一般的に回転数が多いほど、打ちづらいボールとされるが、藤本は現在2000回転強。「あと200、300は上げたい」という。現在は、約3キロのサンドボールを指先でつかむトレーニングを1日200~300回ほど行い、指先も鍛えている。

今年のドラフトで社出身の2人が指名された。阪神1位の大阪ガス・近本光司外野手(24)と楽天1位の立命大・辰己涼介外野手(22)。「社の誇りだと思います。(自分も)プロに行きたいなと思います」と藤本。先輩たちの背中を追う1年が始まる。【磯綾乃】

◆藤本竜輝(ふじもと・りゅうき)2001年(平13)11月1日、兵庫・加東市生まれ。兵庫教育大付属小3年時に社ベアーズで野球を始め、兵庫教育大付属中では野球部に所属。社では1年夏からベンチ入りし、2年秋から背番号「1」。今夏は西兵庫大会8強、秋は県4強。最速147キロ。50メートル6秒4。遠投104メートル。179センチ、74キロ。右投げ右打ち。

▼甲子園のお膝元、兵庫県。しかし近年はセンバツに1校も出場できないなど苦戦する年もある。15年は33年ぶりに出場校ゼロに終わり、18年も兵庫県勢に“春”は来なかった。18年は近畿2府4県の中で唯一1校も選出されず。甲子園春夏通算勝利数で大阪に次いで全国2位の305勝(春168勝、夏137勝)を誇る兵庫県。危機感を強めた県高野連は今年、ある取り組みを始めた。

1月下旬、若手の監督や部長を中心に公募された県内指導者20人が、初めて県外視察を行った。訪れたのは香川・高松商、愛媛・松山商と松山東。兵庫は毎年好投手が多く、投手を中心に守りのスタイルで戦う学校が多い。伝統校や「打」のチームを見て、練習法や新たなスタイルを学ぶ狙いがあった。

兵庫・ほっともっとフィールド神戸で行われた今秋の近畿大会。出場3校のうち報徳学園は8強。明石商は、準優勝して来年のセンバツ出場に当確ランプをともしている。準決勝で明石商は、強打を誇る智弁和歌山に12-0で5回コールド勝ちした。地道な取り組みと無縁ではないだろう。