智弁和歌山・細川を聖地に導いた「ルート5040」

智弁和歌山・細川凌平外野手の夢を応援してきたビート魂ショップ松田武士さん(撮影・鎌田直秀)

<センバツプレーバック:第1回>

平成最後のセンバツは東邦(愛知)の勝利で幕を閉じた。「センバツプレーバック」と題し、担当記者たちが熱き戦いを振り返る。全4回でお届けする。

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甲子園右翼席後方の場外。道路を挟んだ球場敷地外に、高校球児を甲子園に導く“聖地”があった。智弁和歌山・細川凌平外野手(2年)にとっても貴重な場所。Tシャツ、缶バッジなどを販売する「ビート魂ショップ」だ。小5の夏、店の「プロ野球カード」ガチャガチャに熱中したことが始まりだった。

甲子園球場に来場する都度、通い続けた。店主の松田武士氏(54)との出会い、約束が活力でもあった。

細川 おじちゃん、僕のグッズも作ってよ。タオルが良いなあ。

松田氏 よし、甲子園に出たらな。

家族、仲間、自分のため…。甲子園を目指す理由はたくさんある。「いつかは、自分のタオルを作ってもらい、店に飾ってもらうのが夢でした。甲子園で松田さんに良いプレーを見せたかった」。中3時に京都東山ボーイズで世界大会出場。昨夏はついに、代打で甲子園の土を踏んだ。今春センバツは「1番中堅」で初安打を松田氏に披露できた。

座右の銘「志高心強」は、松田氏が考案した言葉だ。バッグやグラブなどに刺しゅうも入れた。「僕が一番好きで、中心にある言葉。それに出会えた場所でもあります。寮生活ですが、いつでも見られるトイレにも貼ってあります」と感謝の念も抱いている。

松田氏は「球魂」など背中のメッセージ入りTシャツ制作の創始者でもある。きっかけはマリナーズ時代のマック鈴木投手(43=野球解説者)に頼まれ「魔ッ紅 鈴木」Tシャツを作ったこと。大手服飾メーカーでのデザイナー経験も生かし、プロ野球オリックスのグラウンドコートのデザインを担当したこともある。「私は甲子園を目指したり、応援している人の力になれることを考えています」と見守る。

細川だけでなく、数多くの球児が訪れるパワースポット。「ルート5040(甲子園)」とも名付けられている。【鎌田直秀】