新潟明訓の挑戦 部員の丸刈りやめ「長髪奨励」

島田監督(背中)の話を聞く新潟明訓の部員。丸刈りはいない

春夏合計8度の甲子園出場を誇る、新潟明訓野球部が、新たな試み「長髪奨励」に取り組んで新年度を迎えている。もともと長髪禁止ではなかったが、今季から「髪を伸ばす」ことを明言。県屈指の強豪の行動は、県高校野球に影響を与えそうだ。

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練習前、島田修監督(53)の前に集まり話を聞く新潟明訓ナイン。脱帽した頭はさまざまな髪形だ。丸刈りは1人もいない。2、3年生選手37人が髪を伸ばし始めたのは年明けから。8日の入学式後に加わった18人の1年生も伸ばすことになる。

昨年12月の「新潟野球サミット」で波間一孝部長(53)が「新潟明訓は丸刈りをやめます」と宣言した。当時監督代行だった今井也敏コーチ(37)と話し合った。「そろそろ(丸刈りを)やめませんかと今井コーチから言われ、私もそうだよな、と」。新潟明訓は伝統的に髪形を規制したことはなかったが、そこから1歩踏み込んだ。

きっかけの1つは高校野球の人口の減少だ。全国的な調査で野球をやっていた中学生の約半数が高校では行わないというデータあった。理由の多くが「丸刈りにしたくない」から。「それならば高校側がしなくてもいい環境にすればいいことです」(波間部長)。

同校OBでNPOに所属し、海外で子どもに野球を教える活動を行う阪長友仁氏(37)の影響もあった。阪長氏は子どもが野球をやりやすくするため、高校野球の変化の必要性を説いていた。「高校野球=丸刈り」への違和感の濃度は高くなっていた。

昨年末、波間部長は選手に言葉を選んで伝えた。「丸刈り禁止」では「長髪禁止」の裏返しでしかない。「髪形自由」にすると結果的に丸刈りのままにすることも予想された。「『みんなで伸ばそう』と言いました。『部としての挑戦だ』と」。知名度のある強豪。成績低迷が続けば髪を伸ばしたことを原因として指摘されかねない。生活の乱れがあれば「やはり」と言われることも想像される。

「そうならないよう、より野球と向き合わなければならない」と岸本大輝主将(3年)。「髪を伸ばし始めてから、みんな今までよりも授業態度が良くなったように思う」と部員の変化を感じた。毎週月曜日の始業前に野球部員全員で行う校内清掃も意識して丁寧に行うようになった。選手には変化に向き合う自覚が芽生えている。

島田監督は「丸刈りなら、ひと目で野球部と分かる。そして好意的に見られてきた。これからは外見では野球部だとは分からない。今まで以上にしっかりした行動をすることで『さすが野球部』と思ってもらわなければならない」。岸本主将は「行動、中身が重要。より真剣に野球に取り組む」。強豪校の“挑戦”は県野球界全体に影響する1つの流れにつながる可能性を秘めている。【斎藤慎一郎】

◆新潟明訓の甲子園 センバツには96年に出場(1回戦敗退)。夏選手権には7回(91、93、99、05、07、10、12年)出場し、10年には8強進出した。甲子園には12年夏から遠ざかるが、1日に監督交代を発表。本間健治郎前監督から、元県高野連専務理事で新潟県青少年野球団体協議会(NYBOC)のプロジェクトリーダーを務めていた島田修監督に代わった。