花巻東V奪還誓う 佐々木朗希攻略へ投打にパワー増

選手らを鼓舞しながらトレーニングを行う冨田トレーナー(撮影・鎌田直秀)

東北各県の春季高校野球県大会が今日17日(宮城は明日18日)に開幕する。岩手県大会は16日、野田村ライジングサンスタジアムで開会式のみを行い、昨秋に4季連続県制覇を逃した花巻東が、V奪還を誓った。新チーム以降、女子重量挙げ75キロ超級クリーン&ジャーク日本記録保持者の冨田史子トレーナー(34、旧姓城内)の指導を受けて強化。投手、打者ともに野球に生きるパワーを身につけ、大船渡の最速163キロ右腕・佐々木朗希(3年)も攻略するつもりだ。

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パワフル・ハナトウが、怪物に襲いかかる。1年秋から「岩手の新怪物候補」と称されてきたエース右腕・西舘勇陽(3年)は、投球も言葉も、ひと冬越して力強さを増した。今春の花巻地区予選では自己最速を3キロ更新する145キロを連発。「県大会には佐々木朗希がいる。絶対に投げ勝ちたい。春と夏の2本の優勝旗だけは誰にも渡さない」。お互いが順当に勝ち進めば、初対決は準決勝だ。

昨年は腰痛に苦しみ続けた。かばいながらの投球でフォームも崩した。昨秋の県大会決勝は盛岡大付、東北大会準決勝では八戸学院光星(青森)に敗れ、3季連続甲子園を逃した。「自分が打たれて負けた。冨田先生のトレーニングのおかげもあって、腰も痛くない。下半身から上半身への連動は、すごく役にたっている」と感謝した。

昨年7月就任の冨田トレーナーが新たな強さを生んだ。自身は全日本選手権を連覇し、世界選手権でも活躍。五輪切符は惜しくも逃したが、力を動作につなげるプロ。野球を担当するのは初めてだが、各競技のオリンピアンを育成した経験もある。冨田トレーナーは「股関節や肩甲骨の可動域がないと力は伝わらない。体のひねり強化のためにも、脇腹の筋肉が野球には重要かなと」。時には優しく、時には「あんたのホームランが見えない!」と厳しく鼓舞することもある。

佐々木洋監督(43)も「スピードが上がったし、体の連動が目に見えて良くなった。トレーニングの概念が変わりました」と手応え。昨秋は公式戦2本だった本塁打も、今春の地区大会だけで5本。165センチ、60キロの細マッチョで柵越えを放つ高橋凌内野手(3年)も「重量挙げの動きで重いものを上げると、一瞬でどうボールに力を伝えれば良いかが分かってきた」。チームとしても本塁打量産だけでなく、走塁などの脚力にもつながってきた。

菊池雄星、大谷翔平と「怪物」は花巻東の代名詞。163キロの速さは、効率の良い力で対抗する。「令和の怪物」命名に、待ったをかける。【鎌田直秀】