高崎・北爪が完封、入院中の監督へ勝利届けた/群馬

館林戦で、12三振を奪って7安打完封した高崎・北爪(撮影・片倉尚文)

<高校野球群馬大会:高崎3-0館林>◇16日◇2回戦◇高崎市城南野球場

負けるわけにはいかなかった。ピンチになるほどに高崎(群馬)の最速144キロ右腕・北爪魁(きたづめ・かい)投手(3年)は冷静になり、その直球はすごみを増した。

2回無死一、三塁では打者の動きからスクイズを見抜いてボール球を投げて空振りに。先制点を防ぐ。2点リードの7回無死二塁ではこの日最速の142キロをたたき出すなどギアを入れ直して3者三振。館林を相手に12三振を奪っての7安打完封劇に、北爪は「監督のためにも絶対に勝ちたかった」と息をついた。

9日の高崎東との1回戦を7回コールド勝ちした直後の11日、チームに衝撃が走った。07年からチームを率いる境原尚樹監督(55)が体調不良のため群馬県内の病院に緊急入院。学校はこの日の試合前、今大会の監督を変更して同校教諭でコーチの大隅(おおすみ)昭彦氏(57)が指揮を執ると発表した。

11日の入院直前、境原監督は「決勝で戻ってくるから勝ち進んでくれ」と選手に訴えた。完治させるには一定期間の入院加療が必要なため、短期での復帰は無理と分かっていながらチームを鼓舞しようとする指揮官にナインは奮い立った。

「最初は現実を受け止められなかったけど、勝つことでしか恩返しできないと思って試合に臨みました」と北爪。18年ぶりに采配を振ったという大隅新監督は「彼のことを考えると無念だが、全力を尽くして戦うしかない」と前を向いた。

21日の3回戦はプロ注目の左腕、井上温大投手(3年)を擁する前橋商と激突。群馬屈指の右腕は「粘って投げるだけ」と力を込めた。【片倉尚文】