仙台育英1年バッテリー躍動 県勢春夏通算100勝

飯山対仙台育英 初回を無失点に抑え笑顔を見せる笹倉と捕手・木村の1年生バッテリー(撮影・上田博志)

<全国高校野球選手権:仙台育英20-1飯山>◇9日◇1回戦

仙台育英(宮城)の1年生バッテリーが躍動した。最速147キロ左腕・笹倉世凪と木村航大捕手が甲子園デビューし、飯山(長野)に20-1の快勝発進に貢献した。1年生バッテリーの先発出場は、78年夏の1回戦で金沢(石川)の2人が東筑(福岡)戦で活躍して以来の快挙。笹倉は3回1安打2奪三振1失点で試合をつくり、木村も3安打。系列の秀光中で昨夏の全国中学総体準優勝した経験値を武器に、宮城県勢春夏通算100勝も導いた。

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結成4年目のコンビは「最速を出そう」をテーマに初戦に臨んだ。笹倉の初球は140キロの直球。相手アルプス席の大声援の中、先頭打者を見逃し三振で始まった。テンポの良い投球を継続し、3回1失点でリズムを作った。「1年らしく全力で後ろの投手につなぐ意識だった。(木村は)信頼感があり息も合う。自分の長所と短所を一番知っている捕手」。この日は最速142キロの直球と多彩な変化球で緩急をつけて被安打1。打っても2安打2打点と投打で貢献した。大阪入り後、ベンチ外の鈴木日向投手(3年)から教わった新球種チェンジアップをすぐに習得し、投球の幅もさらに広がった。

勇姿を披露したかった母方の祖父母の存在も背中を押してくれた。母の実家だった岩手・陸前高田市を襲った東日本大震災の津波被害で、大好きだった2人を突然失った。野球を始めたきっかけは3歳で祖父がグラブを買ってくれたこと。祖母は世界での活躍を願い、外国人も呼びやすいと考えた「SENA」と名付けてくれた。「おじいちゃん、おばあちゃんにも喜んでもらえるように日本一になりたい」。力を込めた。

甲子園から背番号2を背負う木村は扇の要として冷静にリードした。「直球とチェンジアップで組み立て、緩急をつけられた。相手の応援が大きくてアウェー感はあったが楽しかった」。打っても猛打賞デビューに「守備で期待されているが、出塁できて良かった」。小3から野球を始め、複数の守備位置を経験したが、兄がやっていた捕手に小6で転向。「試合を動かせるポジションでやりがいを感じる。投手がフィニッシュボールを思い切りたたけるように準備している」とボールストップにも自信がある。グラウンド外でも木村は気配り上手。同学年の間では、その包み込むような優しさから「パパみたい」と信頼する仲間もいる。

2人と同じ秀光中出身の伊藤樹投手は3番手で登板し2回無失点。渡辺旭内野手も代打で四球を選んだ。大舞台でも物おじすることなし。4人の1年生が、悲願の全国制覇へ勢いをつけた。【山田愛斗】