星稜・奥川154キロは「悪い球」歴代3位も不満

星稜対立命館宇治 3番手でマウンドに上がり力投する星稜・奥川投手(撮影・清水貴仁)

<全国高校野球選手権:星稜6-3立命館宇治>◇13日◇2回戦

星稜(石川)が「オク魔神」で5年ぶりに2回戦を突破した。今秋ドラフト1位候補の奥川恭伸投手(3年)が6回のピンチで登板。好リリーフで立命館宇治(京都)の反撃を断ち切った。

甲子園の球速表示で史上3位タイの154キロもマーク。3回戦はこの日1イニング3本塁打の猛威をふるった智弁和歌山で、注目の大一番になりそうだ。

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投手交代が告げられる前に、奥川はファウルラインの手前で足踏みして待っていた。待ってましたとばかりにマウンドに走ると、満員の観衆から耳をつんざくような拍手と歓声が起きた。「(歓声は)気持ちよかったですけど、打たれたらヤバいなとも思いました」。5-0からこの回、2番手寺西が2点取られて3点差。なお2死一、二塁のピンチで大会NO・1投手の登場だ。

だが、慣れない救援。勝手が違った。2球目を左前にはじき返され、2点差。だが、悪いムードにも奥川はニコリと笑ってナインを落ち着かせ、次打者は遊ゴロに切った。

その後は危なげなく0封し、合計2回1/3を無失点。9回は右翼から勝利を見届けた。甲子園の球場表示では07年佐藤由(仙台育英)13年安楽(済美)の155キロに次ぐ、歴代3位タイの154キロが出た。石川大会では158キロの球場表示を出したが、甲子園での154キロは自己最速だ。

「出たのはうれしいけど、指にかかっていなかった。どちらかと言うと悪い球。ストライクにならず、カウントも悪くしましたし」と意に介さなかった。

終盤2回に抑え役で登板予定だった。反撃にあい、前倒しになったが初回からブルペンに複数回入り、準備を重ねていた。「救援は本当に難しさを感じた。いろいろ考えてしまった」とホッと息をついた。

「一番弟子」と言う後輩の先発萩原が5回無失点。1回戦の旭川大高(北北海道)戦で1点しか奪えなかった打線も、14安打6得点とつながった。奥川は「今日は投手陣もですが、野手がみんな頑張ってくれた。みんなでつかみ取った勝利です」と笑顔。同校の甲子園春夏30勝目は、初戦の1-0完封を上回る充実感があった。そして16日の次戦はこの日1イニング3本塁打で快勝した智弁和歌山戦。悲願の初優勝へ、中2日で大一番に挑む。【柏原誠】