八戸学院光星・下山サヨナラ打「東北に初優勝旗を」

海星対八戸学院光星 9回裏八戸学院光星1死満塁、中前にサヨナラ適時打を放つ下山昂大(撮影・上田博志)

<全国高校野球選手権:八戸学院光星7-6海星>◇16日◇3回戦

八戸学院光星(青森)・下山昂大内野手(3年)が甲子園の「持ってる男」襲名だ! 6-6の9回裏1死満塁、中前適時打を放って、7-6と海星(長崎)にサヨナラ勝ち。「令和1号」となる開幕戦の満塁本塁打に続き、またも殊勲打で14年以来のベスト8進出を導いた。

18日の準々決勝では、昨夏の1回戦で勝利した明石商(兵庫)と対戦。11年夏から3季連続準優勝を誇る東北の雄が、大旗白河越え成就へ、さらに勢いを増した。

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先発メンバー唯一の青森県生まれ下山が、再びヒーローになった。一塁ベースをまわって中前に落ちた打球を確認するとガッツポーズ。何度も跳ね上がって喜び、仲間の熱い祝福を受けた。「今日は自分でも『持っている』と思った」。汗と土にまみれた笑顔で、真っ白な歯を輝かせた。

実は緊張でガチガチだった。初球をひっかけ三塁線にファウル。カウント1-1となって様子を感じ取ったムードメーカー後藤丈海投手(3年)が、ホームベース付近に伝令で走ってきた。「『お前、チャンスなのにピンチの顔してるやん。主役なんだから笑っていけよ』と言ってくれました」。普段なら「オウっ」と笑顔になるはずが「ンンンンン」と声に詰まった。緊張を自覚し、真っ暗の夜空を見上げて心を落ち着けた。「緊張で守備位置とかも全然見ていなかったのでセンターフライかと思ったけれど、本当に勝てて良かった」。バットも詰まったが「持っている男」の本領を発揮した。

憧れの存在は、同じ弘前市出身の西武外崎修汰内野手(26)だ。毎年オフには実家が近所の外崎と食事して、士気を高めている。「外崎さんを目標に、甲子園出場を目指し、3度目の大舞台で開幕戦ではホームランも打てた。これからも本塁打を狙うのではなく、どんどんチャンスでヒットを打って、東北に初めての優勝旗を持って帰りたい。それが外崎さんにも喜んでもらえる一番のこと」。八戸での自主練習では外崎からプレゼントされた木製バットで素振りを繰り返す。手のマメを何度もつぶしてきた勲章の両手で、強烈な「アップルパンチ」をさく裂させた。

八戸で収穫される特産品にちなんだ「サメ打線」は、3試合連続2ケタ安打で相手投手に食らいついた。1回裏に反撃を開始した2試合連続弾の近藤遼一内野手(3年)は「リストは強いので、うまく逆方向に伸びる打球を打てた」。台風の余波で強く吹く浜風に負けず、右翼ポール際に放り込んだ。3回には太山皓仁捕手(3年)も甲子園初となる右越え本塁打で続いた。「テレビで今大会のホームランシーンを放送していて自分も打ちたいなあって思っていたので、うれしいっす」。愛らしい笑顔もはじけた。

2回から6回まで毎回先頭打者の出塁を許す苦しい展開だったが、3投手も踏ん張った。3番手登板の右腕・山田怜卓(3年)は得意のスライダーを駆使しながら、逆転は阻止。次は、同じくサヨナラで8強を決めた明石商と戦う。苦しんでつかんだ大きな1勝で、東北悲願へ大きく加速した。【鎌田直秀】