星稜と名勝負「幸せ」智弁和歌山・池田は悔しさ超越

智弁和歌山対星稜 4回裏、智弁和歌山は3番手で池田が登板(撮影・上山淳一)

智弁和歌山が大会NO・1投手・奥川恭伸(3年)擁する星稜と歴史に残る名勝負を演じた。延長14回タイブレークの末、サヨナラで散った。6回から奥川と投げ合った池田陽佑投手(3年)らナインは一様に脱帽したが、優勝候補の前評判にたがわぬ意地を見せた。「グッドルーザー」に観客から大きな拍手が送られた。

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池田はマウンドに膝から崩れ落ちた。「何が起きたか分からなかった。頭が真っ白になった」。延長14回。少し甘く入ったスライダーをたたかれ、サヨナラ負けを告げる白球が左中間へ伸びるのを見送った。

1-1に追いついた直後の6回。「背番号1」がコールされ、奥川との投げ合いが始まった。延長10回まで毎回三振の相手に対し、池田も三塁を踏ませず粘った。中谷仁監督(40)は「延長、どこまででもやるぞ」と選手を鼓舞し続けた。タイブレークでは13、14回にバントで進塁を狙うも、奥川に華麗なフィールディングから三塁封殺された。2回戦の明徳義塾戦で大会タイ1イニング3発を放った打線が必死に食らいついた。が、本塁が遠かった。

息詰まる投手戦を終えた最速150キロ右腕の顔はすがすがしかった。池田の胸に訪れたのは、悔しさを超越した思いだった。

「楽しかった。ずっと投げていたかった。奥川に負けたくないという気持ちが、自分の力以上のものを出させてくれた。自分のベストゲームです。いい試合をすることができて幸せだった」

黒川主将の涙も高レベルの投手戦を証明した。U18日本代表候補合宿で仲良くなった奥川に6打数無安打。池田の力投に報えず、おえつが止まらなかった。

「悔しいです。終わらせたくなかった。陽佑(池田)とは一番けんかして一番怒ったが、今日はあいつに最後まで助けられ、自分は助けることができなかった。奥川は素晴らしいボールだった」

黒川と同じくU18代表の東妻は「変化球のキレがすごかった。狙い球を絞っても全然打てなかった」と白旗。中谷監督も「足がつっても最後まで投げきった。脱帽です。池田はよく投げてくれた」と潔く負けを認めた。互いが互いの力を引き出した名勝負。智弁和歌山にも万雷の拍手が送られた。【南谷竜則】