社会人仕込み中京学院大中京・橋本監督が継投で勝機

作新学院対中京学院大中京 作新学院を破った中京学院大中京は校歌を歌い終えスタンドの応援団に向かって元気よく駆けだす(撮影・梅根麻紀)

<ザ・ピンポイント>

<全国高校野球選手権:中京学院大中京6-3作新学院>◇18日◇準々決勝

勝負どころでの投手交代が、中京学院大中京に流れをもたらした。

0-3で迎えた7回2死一、二塁。初回に3ランを打たれた作新学院・石井を迎え、橋本哲也監督(55)が動く。2番手の元に代わり、赤塚を送った。身長193センチ、最速148キロの右腕は、持ち球がほぼ直球だけ。3回戦の東海大相模戦では、全31球のうち、唯一の変化球であるスライダーは1球しか投げなかった。

「香車」の赤塚に対し、石井は「直球に張っていました」。初球、2球と直球でボール、ファウル。3球目、初めてスライダーが来た。甘かったが「打ち損じました」と悔やむ左飛に終わった。直後に2失点。8回に4失点で逆転され、作新学院・小針崇宏監督(36)は「勝負のポイント。チャンスは来てたが、ものにできなかった」と言った。

継投について、橋本監督は「これまで同様、早め、早めの切り替えでやった」とだけ話した。7回の攻撃で赤塚に代打。ワンポイント起用とした。8回からは右翼に回った元を再び送り、逆転勝ちを呼び込んだ。

外野守備に就け再登板の選択肢を残し、小刻みに代えていく。終盤の派手な逆転劇の背景には、守りながら攻める積極策があった。

東海大相模戦でもそう。1-2の6回2死二塁。右の強打者、西川。ここで左腕不後に代え、右下手投げの村田をワンポイント起用した。緩い110キロでタイミングをずらす二ゴロ。適時失策となったが、強いスイングが売りの西川を封じた。直後の7回、一挙7得点で逆転勝ち。敵将の門馬監督は「アンダースローは想定外」。西川も「対応できなかった」と認めた。

15年就任の橋本監督はNTT西日本でコーチ、監督、GMを歴任。都市対抗9度の経験をもつ。「社会人は投手を代えると打たれることが多い」と違いを口にするが、シビアな一発勝負の世界で磨かれた勝負勘が光る。こうも強調する。「代わる姿勢を意識させます。『交代かよ』ではなく、次の人に、はつらつとバトンを渡せるように」。臨機応変のタクトに選手が応え、関東の実力校を鮮やかに連破した。【古川真弥】