中京学院大中京監督が口撃!必勝公園で打倒奥川伝授

準決勝に向け力強くガッツポーズをつくる中京学院大中京ナイン(撮影・梅根麻紀)

中京学院大中京(岐阜)は19日、大阪・吹田市内の、チーム間では通称「必勝公園」と呼ぶ公園で準決勝前の練習に臨んだ。

橋本哲也監督(55)は、準決勝で対戦する星稜・奥川恭伸投手(3年)対策として言葉巧みにバッティングを指導した。報道陣50人が詰め掛け、ただでさえ手狭なグラウンドは、選手とマスコミであふれかえった。

最初に橋本監督はテレビカメラが回っている前できっぱりと言い切った。「明日は奥川が来るぞ。いいか、打てないぞ、でも、打て。打てないけど打てよ」。今大会の奥川は154キロを連発し、ストレートを内外角に投げ分けながらの高速スライダーとのコンビネーションはすさまじい威力を発揮している。そのボールへの意識を高めつつ、具体的な指示を忘れない。「あのスライダーは見極め切れない。150キロの真っすぐが来てからのスライダーは振ってしまう。絶対無理だ。2ストライク取られ追い込まれたら負け。だから失投の1球しかないぞ。1球を仕留めろ」。

失投を仕留めることを意識づけさせてから、ビニールのヒモにくくりつけたバドミントンのシャトルを取り出した。バットを構えさせた目の前でビニールヒモをクルクル回しながら、シャトルをストライクゾーン付近で回戦させる。「タイミングを取れ、目を慣らすんだ。羽を目で追え」と、目が回るくらいのスピードで、シャトルを何度も回して見せた。

目を慣らした後は、橋本監督が至近距離からレギュラー1人1人にシャトルを投げ込んだ。1球ごとに「打つな」「打て」と叫ぶ。振ってはいけないスライダーを内角に投げ、バットを止めさせる。その中で時折、失投をイメージさせるコースにシャトルを投げ、スイング直前にで「打て」と叫んでスイングを促した。さらに「打て」の中にも、ファウル打ちを指示し、カットでしのぐ意識を徹底させた。

汗まみれの橋本監督はさらに言葉を続けた。「いいか、四球は弱気な攻めじゃないぞ。四球を選ぶというのは攻撃的な作戦だ。打席の一番前、目いっぱい前に立て」と言い、奥川が内角を投げづらいポジションを取らせてプレッシャーをかけ、失投を狙う対策を繰り返した。智弁和歌山戦でも打席ギリギリ前に立つ打者がいたが、奥川のコントロールはその上をいく正確さだった。奥川の制球を認識している橋本監督はなりふり構わず、マスコミの前で堂々と手の内を明かした。そして、奥川のボールから「逃げない」意識を選手たちに植えつけていた。

練習の最後にはこう言って締めくくった。「奥川が先発で来たら、幸いだと思え。いいか、150キロを投げてくる。だからスイングはいつもの半分でも球威があるから飛んでいく。奥川君、ありがとうございます。僕は半分の力で打ちますよ、その気持ちで行け」。

練習を終えた橋本監督は「この公園のことを子供たちは必勝公園と呼んでいるみたいです。ここで練習して東海大相模に勝ち、作新学院に勝ちました。ここは必勝公園です。ご近所のお子さんを犠牲にして練習させてもらいました」。時間にして午前9時から約50分、短い時間の中に、奥川への対策をたっぷり詰め込み、決戦前の最後の練習を終えた。