昨秋の福島県大会で53年ぶり3度目の優勝を果たした学法福島の左腕エース辻垣高良投手(3年)が、夏に向けてじっくりと力を蓄えている。
1月15日から1か月間、全国大会常連で幕内返り咲きが確実視される若隆景(25)らを輩出した名門相撲部に入門し、肉体改造を図るなどスケールアップ。すでにプロ数球団が調査に乗り出す「学福のドクターK」が、虎視眈々(たんたん)と同校初の甲子園出場を狙っている。
この冬、辻垣はマウンドから土俵へと場所を変え、鍛錬を積んできた。足裏の使い方、体重移動、柔軟性、バランス、パワー。相撲に求められる要素は、そのまま投球に生きる。藤森孝広監督(42)が夏の甲子園、そして夢のプロ入りのために打ち立てた「辻垣強化プラン」の一環だった。
放課後の2時間、スパイクではなくはだしになって、てっぽう、すり足、四股に始まりぶつかり稽古まで、股割りや相撲部独自のウエートトレーニングにも取り組んだ。2月14日の最終日、まわしを着けて臨んだガチンコ10番勝負では、2勝を挙げてみせた。相撲部の二瓶顕人監督(34)も「野球をやめて相撲に来てほしいくらい。馬力がすごくて十分通用する」とうなった。
野球部に戻った辻垣は「うまく軸足で立てるようになった」と成果を実感した。食トレの効果も重なり体重は74キロから80キロにアップ。体幹も鍛えられたことで投球フォームが安定した。昨秋の県大会決勝の再現となった福島成蹊との練習試合では、抜群の制球力で6安打11奪三振、101球を投げ完投勝利を挙げた。藤森監督は「力強さが出てきた。野球はコンタクト(接触)スポーツじゃないが、相撲の当たりを経験したことで、度胸も負けん気もついたのは副産物。マウンドでも自信がみなぎっている」と成長を認めた。梅田誉希捕手(3年)は「直球の威力と質が増し、チェンジアップも勝負球にできるようになった」。ミットをはめる左手には、衝撃を緩和するため、去年まではなかった手袋がはめられていた。
昨秋の東北大会は東奥義塾(青森)から12三振を奪いながら、8回2死から不用意な1球を逆転本塁打され、初戦敗退。それでも県大会から9試合を1人で投げ抜き、85回で89奪三振、防御率1・05と安定した。最速は137キロながら、2種類のスライダー、スクリュー、フォークを交えて三振の山を築いた。「秋は勝てた試合。もったいなかった。でも負けたことで思いはより強くなった。プロにも行きたいけど、それ以上にまずは甲子園に行きたい。自分が全試合投げて勝ちたい」。進化を続けるドクターKは、福島の横綱に昇進して、甲子園切符をつかみ取る。【野上伸悟】
学法福島・印部颯汰主将(3年)「秋は辻垣を援護できずに負けてしまった。攻撃力をアップし、チャンスをものにできるようにして、夏の甲子園を目指したい」
◆辻垣高良(つじがき・たから)2002年(平14)6月10日生まれ、神戸市出身。小束山小4年の時に小束山少年団で野球を始め、多聞東中時代は神戸中央シニアでプレー。7、8番手の控え投手で全国大会出場はなし。当時のチームメートには智弁学園(奈良)の山崎空雅外野手、今崎圭秦外野手、佐藤尊将捕手、神村学園(鹿児島)の田中舜太朗投手(いずれも3年)らがいる。趣味は釣り。180センチ、80キロ。左投げ左打ち。家族は両親と中部大で投手の兄泰良さん。