来春センバツ予断許さない「長期的闘い」甲子園中止

第102回夏の甲子園大会の中止を発表する朝日新聞社の渡辺雅隆社長(朝日新聞デジタルより)

日本高野連は20日、夏の甲子園大会と出場権をかけた地方大会の中止を発表した。各地方で独自の単独大会開催への動きがあり、日本高野連、朝日新聞も財政面の援助など3年生最後の舞台へ今後も知恵を絞る。だが、新型コロナウイルス感染拡大は収束傾向ながら第2波、第3波が懸念される。日本高野連の八田英二会長(71)は「長期的なコロナとの戦い」と位置づけ、秋季大会や来春のセンバツ開催も予断を許さない状況と明かした。

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球児たちに一番大切な夏の甲子園が、中止になった。大阪市内の日本高野連事務局でオンラインでの運営委員会、理事会を開いて正式決定。夏の甲子園中止は3度目で、センバツと春夏連続の中止は戦争での中断を除いて初めてだ。3年生は新型コロナウイルスの影響で最後の夏を奪われた。八田会長は「心が折れる思いかもしれない。みなさんが大会出場を目指した球児という栄冠は永遠に輝いています」と思いやった。

約3800校が参加する全国の地方大会での感染リスクを完全になくすことは難しかった。5月の連休明けに緊急事態宣言が解除されず、休校延長したことが決定打となった。夏休みの短縮など学業の遅れを取り戻すための支障になりかねず、3月から部活動を再開できていない学校も多い。故障の危険も否定できなかった。八田会長は「全国の部員がベストコンディションで、フェアな条件で試合に臨めない。痛恨の極み」と厳しい表情で話した。

甲子園での全国大会は全国からの移動や宿泊を伴い、コロナの感染拡大リスクは避けられない。無観客開催も検討したが、大会延期は考えなかったという。

この日、愛知県高野連などが独自大会の開催検討を発表した。各都道府県の代替大会について、八田会長は「各地方それぞれの高野連の自主的な判断に任せる」。無観客開催などで経費的に厳しい地方には、日本高野連と朝日新聞が財政的な援助を行うことが決まった。3年生に何とか晴れ舞台をという思いは変わらない。各高野連から相談されれば、専門家のアドバイスや積み上げた感染防止策を惜しまず伝える。

だが、新チームの中心となる2年生たちにとっても予断を許さない状況が続く。コロナはひとまず収束傾向にあるとはいえ、未知のウイルスの先行きは不透明だからだ。八田会長は「専門家が(コロナの)第2波、第3波が来るのは確実と言っている。終息の見込みが立たないところで、長期的な闘いである。秋についても長期的、中期的に感染状況がつかめない。その時に考えさせていただく」と説明した。センバツ出場校の重要な選考資料になる秋季大会は開催できる保証はない。、最悪、センバツが中止になる可能性を否定しなかった。

今春涙をのんだ32校の救済策は何も決まっていない。もし秋季大会が中止になれば、来春のセンバツに出場させてはというプランも浮上するかもしれない。だが、3年生は取り返せない。その無念は計り知れない。歴史的決断が下された一日。コロナ禍はどこまで続くのか。【石橋隆雄】

主な高野連会見一問一答は以下の通り。

-改めて中止で重視した点

大会会長渡辺雅隆朝日新聞社社長(以下渡辺) まず何よりも球児たちの安全ということ。原則的に全国大会と地方大会で構成される1つの大会と考えている。開催できない地方大会が見込まれると、大会全体が成り立たなくなる。全国で安全に実施していくことは極めて難しいという判断をせざる得なかった。

-各地方で代替大会の動きが出ているが、開催する県、開催できない県が出てくることについて

日本高野連八田英二会長(以下八田) 日本高野連として、どのような方向という方向を打ち出しているわけではございません。自主的な判断にお任せする、これが私たちの基本的な姿勢。

-甲子園を無観客での開催という案もあった

八田 あらゆる可能性のうちのひとつとして、無観客もあった。

-緊急事態宣言が解除された地域もあったが

八田 確かに39のところでは解除された。それぞれの地域によって温度差があるというのは確か。ただ今回は全国でいえば3800近くの高校、あるいは15万人を超えるような球児たち。これは大きな違い。地方を巻き込んだような、地方と全国大会。これが春と夏との間の検討していく上での違い。春との感染状況を考えても、春以上にすすんでいますので、これも大きな違い。

-開催を遅らせることは考えなかったのか

八田 まず全国大会の開催を8月10日から後ろに変更することに関しては、夏休み中に実施できないと。また、新チームがもうすでに指導している時期で、都道府県にとっては8月下旬ごろから秋季大会の地区予選を始めるところもある。全国大会の日程を遅らせるということは、最初から検討の対象には入っていない。