仙台商硬式&軟式、消えた夢は来年へ/あゝ甲子園

仙台商軟式野球部の西山監督(左)と同硬式野球部の下原監督。画面はオンラインで取材対応する軟式・高橋主将(左)と硬式・千葉主将(撮影・鎌田直秀)

<あゝ甲子園>

センバツに続き、夏の甲子園も戦後初の中止が決定した。各所に及ぼす影響は計り知れない。「あゝ甲子園」と題し、人々の思いとともに紹介していく。

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聖地への挑戦権が消えたのは軟式野球も同じだ。

20日に第65回全国高校軟式野球選手権大会(8月26日開幕、明石トーカロほか)も、硬式同様に中止決定。ともにアベック“甲子園”出場を狙っていた仙台商(宮城)の目標も消えた。隣接するグラウンドでお互いを高め合ってきた両主将、監督の4人が22日、オンラインを含めて集い、再出発を誓った。

6年連続選手権出場中だった軟式・高橋将人主将(3年)は「努力してきたことは軟式も硬式も変わらない。結果ではなく、最後に笑って終わることができる試合がしたい」。昨秋に宮城大会準優勝の硬式・千葉滉太主将(3年)も83年以来4度目出場が果たせず「軟式に負けられないとやってきた部分もある。代替大会を開催していただけるなら、県内で頂点を目指せる場にしてほしい」と願った。硬式は各都道府県高野連が代替開催に向けて前向きな意向を示しているが、軟式は不透明な現状だ。

昨年度の日本高野連加盟校数は硬式3957校(部員数約14万3000人)に対し、軟式は416校(同約8200人)。東北全体では宮城の12校を筆頭に、35校しかない。昨年10月に福島・いわき市で開催予定だった秋季東北大会も台風19号の甚大な被害によって中止。加盟校が県に1校しかない平工(福島)、羽黒(山形)は東北大会からの出場だったため、3季連続の中止によって最高学年での公式戦が1試合もないまま卒業する可能性も出てきた。

軟式・西山康徳監督(38)は「宿泊や移動の問題はあるのですが、各県というよりも東北大会のような形でできるようにしてあげたい」と動き始めている。東北も部活動が再開出来ているのは青森、岩手、秋田の3県だけのため、仮に各校独自での実施となれば時期や会場確保だけでなく、新型コロナウイルス予算の問題も浮上してくる。

同校は3月3日から休校が続き、6月1日以降に学校が再開予定。部活動再開はさらに1週間後の見通しだ。中止決定を受け、オンラインで全員との個人面談も行った硬式・下原俊介監督(49)は「東日本大震災の時は『さあ復興だ』と言えたが、その時とはまったく違う」と頭を悩ませる。「簡単に『頑張れ』なんて言えないけれど7月7日開幕だった(宮城大会の)日に合わせて積み重ねていきたい」と約1カ月で心技体を整えていくつもりだ。

例年は夏の宮城大会後も、硬式部員が全国大会に臨む軟式部員のために打撃投手を務めるなど、最後まで協力しあって完全燃焼してきた。両部とも、秋以降も進学や就職に備えつつ下級生育成に努めることが3年生の伝統の1つでもある。来年迎える学校創立100周年の全国アベック出場に向け、さらに結束を強めて新たな夢の1歩を進む。【鎌田直秀】