福岡大大濠・山下3K「まだまだ」スカウトは高評価

登板を終えた福岡大大濠・山下(撮影・清水貴仁)

<プロ志望高校生合同練習会>◇30日◇甲子園

今秋ドラフト1位候補の最速153キロ右腕、福岡大大濠・山下舜平大(しゅんぺいた)投手が30日、甲子園で行われた「プロ志望高校生合同練習会」のシート打撃で150キロの直球を披露した。打者5人に1安打、1四球、3奪三振。安打を許したのは、スタッフとして運営を手伝った大学生だけ。参加投手ただ1人の150キロマークで、12球団のスカウト96人に抜群の能力を改めてアピールした。東日本では9月5、6日に東京ドームで行われる。

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直球とカーブだけで抑え込んだ。初めて立つ甲子園のマウンドに「感動しました」と山下。1ストライク1ボールから始まるシート打撃で、先頭の神村学園(鹿児島)の桑原秀侍投手への3球目の高め直球が、この日最速150キロを計測した。18球中11球が直球ですべて145キロ超え。3つのうち2つは120キロ台のカーブで三振を奪い、緩急で翻弄(ほんろう)した。

対戦予定の選手の負傷で、5人目の打者はスタッフの同大・杉森圭輔捕手(2年=敦賀気比)に。山下は大学生の参戦は知らず「出てきてびっくりしました。やっぱり3ボール1ストライクになって、真っすぐに張られていて、やっぱり、まだまだだなと思いました」。148キロの内角直球をはじき返され、反省した。

進路は高卒でのプロ1本。今夏の独自大会で評価を急上昇させたが「アピールする場があればアピールするもんだと思っていました」と合同練習会に参加した。ヤクルト小川GMは「雰囲気も申し分ないし、素材的にも申し分ないと思う」と話し、ソフトバンク永井編成育成本部長兼スカウト育成部長は「球に勢いがあるのでマウンドが近く感じられる。圧を感じる。1位指名をされるくらいの能力はある」と高評価した。

八木啓伸監督(42)が大きく育てようと、カーブ以外の変化球は封印。山下は「他の球種を投げたら幅は広がる。スピードボールを投げる投手に憧れているので、もっと伸ばしていきたい」と話す。ドラフト会議まで成長を期待させる2日間だった。【石橋隆雄】

◆山下舜平大(やました・しゅんぺいた)2002年(平14)7月16日、福岡市生まれ。野多目小3年から筑紫丘ファイターズで野球を始める。三宅中野球部3年時に福岡県選抜で全国大会準優勝。福岡大大濠では2年春からエース。カーブは120キロ台と100キロ台と2種類を使い分ける。遠投110メートル。50メートル走6秒7。188センチ、93キロ。右投げ右打ち。血液型B。名前の由来は20世紀前半に活躍した経済学者ヨーゼフ・シュンぺーターから。

○…ドラフト1位候補の福岡大大濠・山下から安打を放った同大・杉森は、主にブルペンで投手の球を受けるスタッフで参加していた。フリー打撃時に選手負傷で1枠空いたと聞き「行きます」と立候補。「角度もあるし、手元でグンと伸びてくる感じ。カウントが3-1になったので直球に張っていこうと思った」と内角直球を左翼へ。「プロを目指している。こういう形で名前を残すことができた。反響は少しずつ来てます」とアピールに笑顔だった。

○…練習会終盤の午後3時16分から甲子園をゲリラ豪雨が襲い、フリー打撃で5人の投手が室内での登板に変更となった。最速153キロ右腕の帝京大可児(岐阜)加藤翼投手は「楽しみにやってきて残念。ダイヤモンドすら入れなかったので悲しかった」とがっかり。室内で計測不能だったため、この日2人目の150キロ台を出す機会はなくなったが、直球主体で大阪桐蔭・西野力矢内野手から三振を奪うなど、力は発揮した。

▽NPB平田野球振興室長(2日間の合同練習会を終えて)「高校生からは、仲間からいい刺激を受けたという感想が聞かれた。スカウトのみなさんからは、こういった選手が集まっているおかげでいろいろと見られてよかったという声はあります。(来年以降は)NPBの希望だけでは決められない。こういった話があればまた検討する」

▽履正社(大阪)内星龍(うち・せいりゅう)投手(15日の甲子園高校野球交流試合・星稜戦では登板機会がなく)「甲子園のマウンドは景色もよく、非常に投げやすかったです」

▽武田(広島)久保田大斗投手(シート打撃では4者連続三振を含む5人斬り)「自分の持ち味をアピールすることができた。西日本でプロを目指す選手が集まった場所で、自分と違う考え方や練習方法など、参加した選手とコミュニケーションを取れた」

▽中京大中京(愛知)中山礼都(らいと)内野手(シート打撃7打席で5四球を選ぶ)「四球を選ぶことも重要だと考えていました。今回の結果に満足することなく、これからの野球人生に生かしていきたい」

▽大阪桐蔭・西野力矢内野手「全員のレベルが高く、刺激になりました。大阪桐蔭の先輩である(日本ハム)中田翔選手のようなプロ野球選手になりたいです」

▽龍谷大平安(京都)奥村真大内野手「自分が持っていることをアピールできたと思います。自粛期間中は、将来を考える時間が増えた。トレーニングなどで体重が10キロ増え、長打を多く打てるようになった」

▽柳ヶ浦(大分)西川拓馬外野手「レベルの高い選手が集まり、体験したことがないボールでしたが、打席でうまく対応できました」

▽広島商・寺本聖一外野手(169センチの小柄な体から巧みなバットコントロールで2本の二塁打)「自分の力を発揮でき、プロのスカウトの方に良いアピールができた。1打席目は打った後、一塁へ走るのを忘れるくらい集中していました」