3年生最後の紅白戦、聖光学院が夏恒例の壮行試合「結果よりも思い込めて」

父母から贈られた千羽鶴の前で夏15連覇を誓う聖光学院の選手たち(撮影・佐藤究)

仲間を思う分だけ、自然と涙があふれた。夏の福島大会(7日開幕、いわきグリーンスタジアムほか)15連覇に挑む聖光学院は4日、桑折町内の同校グラウンドで夏本番前恒例の壮行試合を行った。午前の第1試合は3年生の控え組メンバーを中心に7イニング制を戦い抜き、結束を固めた。午後は2年生と戦った主力組が4-1で勝利。夏の絶対王者・聖光ナインはまた1つたくましくなり「福島夏の陣」に臨む。

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3年生43人による最後の紅白戦。この日、スポットライトを浴びたのは控え組メンバーだ。田仲裕一郎投手(3年)の目には、試合前から光るものがあった。「自分にとって、この試合が最後だと思うと、グッと込み上げるものがあった」。登板機会が訪れたのは5回だった。「結果よりも思いを込めて投げた。捕手のミットが見えなかった」。マウンド上でも自然に涙がほおをつたった。懸命に左腕を振り、1回を無安打無失点。ベンチに下がると、涙を流した仲間たちから「ナイスピッチ」。投じた全16球に気持ちを込めた。

グラウンド横で見守った両親へ、最後の勇姿を届けた。「本当はベンチ入りで甲子園出場して、恩返しがしたかった」。そんな思いを胸に、地元のいわき市を離れ、夏14連覇中の強豪校の門をたたいた。1年秋、2年春に腰の疲労骨折と故障にも悩まされた。「今までいろいろな苦労があった」。試合2日前に母から1通のメールをもらった。「最後、悔いのないように頑張れ」。公式戦のマウンドには1度も立つことはなかった。思い描いた形での選手としての引退ではなかったかもしれない。それでも、3年間の歩みは間違っていなかった。田仲は充実感に満ちた表情で言い切った。「1球1球に対する思いは、これまでで1番強かった。公式戦で投げることよりも、価値ある経験ができた。きっと、親にも届いたと思います」。

試合後は、3年生のボルテージが最高潮に達した。お互いの健闘をたたえ合い、涙ながらに抱き合った。感極まる選手たちに、斎藤智也監督(58)は言った。

「良いチームになったな。今日でユニホーム脱ぐやつらが20人以上もいてるんだから、これからユニホーム着るやつらは8月下旬(甲子園決勝)までユニホームを脱ぐなよ。いいか? 絶対着とけよ」

3年生の主力組にとっては、負ければ「引退」の夏が始まる。2年生チームとの試合で2ランを放った坂本寅泰(ともやす)主将(3年)は「チームが1つになった。(控え組が)自分を捨てて、目の前のことだけに集中して戦う姿は、自分たちの刺激になった。夏に向かっていくための大きなものをつかんだ」とナインの結束は深まった。前人未到の夏の福島V15、その先にある東北勢悲願の日本一へ-。険しい道のりもチーム全員で乗り越え、夏の栄冠をつかむ。【佐藤究】