富士見・板倉の気配り、声掛け、アドバイスで駆け抜けた全力の夏/長野

富士見の板倉右恭一塁手(3年)は、いずれも1年生の二塁、遊撃、三塁にリラックスするように声をかけ続けた(撮影・井上真)

<キミしか勝たん>

<高校野球長野大会:梓川10-0富士見(5回コールド)>◇6日◇1回戦◇しんきん諏訪湖スタジアム

敗れた富士見は、昨年の秋季大会は部員5人で単独チームでの出場はかなわなかった。今春、1年生が8人入部し、今夏の単独出場の光が見えた。3年生4人、2年生1人。入部したばかりの1年生8人が鍵を握る。綱渡りのチーム事情だった。

4番の板倉右恭内野手(3年)は、忙しく周囲に気を配っていた。一塁手として、常に二塁手の阿部拓馬、三塁手の山口思駿、遊撃手の平出太一の1年生トリオに声をかけ続けた。イニング合間の捕球、送球の練習時も、ジェスチャーと声で緊張気味な1年生を激励。もちろん練習時も、1年生がリラックスして力を発揮できるように声をかけてきた。外野手には、「打球が飛んだら1回下がってから前に来た方がいいよ。その方がボールを見た状況で対応できるから」。この日も、外野手が目測を誤ってのヒットを許したが、すぐに声を張り上げて鼓舞した。また3年生にも「上級生がビビると1年生も固くなるから、ひきつる顔はやめようぜ」と4人の最上級生で力を合わせて、チームをもり立てようと努めた。

富士見にとっては、1年生に入部してもらうことがこの春、一番の課題だった。板倉は「練習の風景をインスタに上げて、中学生にも見てもらえるようにしてきました」と、腐心してきた内情を明かした。今春まで5人で部活を続けてきた苦しさがあるからこそ、1年生を励まし、アドバイスを送って、ここまでやってきた。

この試合には2つ目標があった。一塁でスタメンも、途中から捕手に回るプランだったため、「ピッチャーのボールを絶対に後ろにそらさない」と決めていた。予定通り捕手を務め、「ワンバウンドも何本がありましたが、全部体で止めることができました」。そして、この日は両親が見にきていた。父文彦さん(50)の前では本塁打を放っているが、母たまきさん(45)の前ではまだなかった。「ホームランは打てませんでしたが、ヒットは出ました。母の前で打ててよかったです」。2打数1安打。最後の夏も、全力で戦い抜いた。