弘前学院聖愛8年ぶりV 甲子園で「津軽から日本一」実現だ/青森

8年ぶり2度目の優勝を飾り、笑顔を見せる弘前学院聖愛ナイン(撮影・佐藤究)

<高校野球青森大会:弘前学院聖愛6-5青森山田>◇26日◇決勝◇ダイシンベースボールスタジアム

「津軽から日本一」へのスタートラインに立った。弘前学院聖愛が青森山田を6-5で破り、8年ぶりに夏の甲子園(8月9日開幕)切符をつかんだ。5-5で迎えた8回に5番遊撃の長利(おさり)斗真内野手(3年)が値千金の決勝弾を放ち「青森頂上決戦」を制した。エース右腕、葛西倖生(2年)は1回途中から2番手で登板し、8回1/3を4安打2失点の力投を見せた。初出場した13年夏は「全国2勝」をマーク。ナインは全国の頂点を目標に掲げ、2度目の聖地に乗り込む。

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甲子園切符が懸かった「青森頂上決戦」。優勝の喜びはひとしおだった。6-5で迎えた9回2死一、二塁。エース葛西が最後の打者を直球で左飛に打ち取った。ナインはマウンドに駆け寄り、人さし指を真っすぐに突き上げ、歓喜の輪をつくった。18、19年はともに決勝で涙をのんだが、8年ぶりに夏の頂点に立った。原田一範監督(42)はベンチ前で涙が込み上げた。

「何とか勝てた。選手たちは、最後まで食らいつきながら粘ってくれた。劣勢の中でも、精神的な大きな成長が見られました」

背番号1を背負った葛西の力投が、逆転勝利の呼び水となった。0-2の1回2死一、二塁から2番手で登板。先頭打者に中前適時打を許すも、後続を二ゴロで最少失点に抑えた。常時セットポジションからキレのある直球に変化球、時折山なりのスローボールと変幻自在な投球を披露。青森山田打線を8回1/3を4安打2失点に封じ込め、チームの反撃ムードを高めた。「緊張もあったんですけど、気持ちで球の質が変わると思っているので、強い気持ちを持って投げ込んだ」と135球に全身全霊の思いも乗せた。

野生本能 考えるな! 感じろ 

帽子のつばに、そう言葉を刻んだ長利が、ヒーローになった。5-5の8回無死。「簡単に打ち取られると流れが(青森山田に)いくと思った。ここは自分が塁に出て、次の打者につなぐ意識だった」。野生本能を研ぎ澄ませ、右打席で勝負どころをかぎ取った。初球だ。真ん中高め直球を迷わずにフルスイング。鋭い金属音とともに、打球は左翼芝生席へと一直線。決勝ソロとなった。「とにかくうれしかった。『入れ!』と思いながら走っていた」。無心でバットを振り抜いた結果、殊勲打につながった。

甲子園に初出場した13年夏は全員津軽出身の「りんごっ子」として16強入りを果たした。現チームベンチ入りメンバーにも県外出身者はおらず、津軽出身の選手がほとんどだ。長利は堂々と言い切った。「津軽から甲子園で優勝したらかっこいいなと思う。憧れ続けてきた場所で、1戦1戦を味わいながら、勝ち上がっていきたい」。待ち焦がれた夢舞台。チーム内の合言葉「津軽から日本一」を実現させる。【佐藤究】