サプライズ選出の大垣日大 ニュースで賛否渦巻くも「責任と感謝を忘れずに」いざセンバツ

ナインに訓示する大垣日大の阪口慶三監督(2022年2月1日撮影)

<アマ野球リポート>

第94回選抜高校野球(3月18日開幕、甲子園)に大垣日大(岐阜)がサプライズ選出された。昨秋の東海大会準優勝だった聖隷クリストファー(静岡)の選出が濃厚とみられていたが、1月28日の選考委員会で4強の大垣日大が選ばれた。想定外の選出で同校にとっても衝撃の1日になった。甲子園通算38勝を誇り、77歳10カ月でセンバツの指揮を執る阪口慶三監督やナインはどんな心境か。甲子園に向かう思いを聞いた。【取材・構成=酒井俊作】

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冬の雨は心を寒々しくさせる。日は落ちていた。伊吹山系から吹き下ろす風雨にさらされても、77歳の阪口慶三監督は傘も差さず、腕組みしていた。数人しかいないグラウンドで、タイヤ引きを見守っていた。

1月28日は監督56年目の名将にとっても衝撃の1日になった。「(選抜は)まったく頭にない。普通の練習をしていた。記者の方が増えていく。学校に電話して、何か変わったことはないかと。電話が入ったと。『ウソーッ』というのが第一声です」と振り返った。

昨秋の東海大会で好投手を擁する静岡と愛知1位の強豪享栄に連勝したが、地区2枠を巡る準決勝で日大三島(静岡)に5-10と敗北。「夏の甲子園に向けて頑張ろう」。昨年の公式戦を終え、生徒にかけた言葉だ。年末には和歌山で合宿し、夏を見据えてきた。

驚きの“逆転選出”を手放しで喜んでいるわけではない。阪口監督は「選考委員の方が試合を見られたこと。何とも言えない」と厳しい表情だった。大会要項で、試合成績などを勘案しつつ勝敗のみにこだわらず、内容などを参考にする点や秋の地区大会は参考資料の1つでセンバツの予選でない点などと明文化された選考基準に依拠して選ばれた。あいまいにも聞こえる選考委の説明にも賛否が渦巻くが「一生懸命やるだけです」と言葉少なだった。指導の現場は決定を受け止めるしかない。自らコントロールできない現実にとらわれず、自然体がにじむ。

ナインは寮で暮らす。日々、携帯電話などを通じて聖隷クリストファーに同情が集まるニュースも目にするという。甲子園を目指す同じ球児の思いを痛切にかみしめつつ、仲間で「チームとして責任と感謝を忘れずにプレーしよう」と言い合う。「選んでもらったことに自信を持って僕たちは戦うしかない」という声もあった。多感な高校生は今に目を背けず、前に進む。

阪口監督は出場が決まると生徒に「おめでとう。夢がかなったねえ。甲子園に1日でも長くおれるよう、頑張ろう」と伝えた。昨秋は左腕の五島幹士投手(2年)と右腕の山田渓太(1年)の両輪が柱だった。監督の孫の高橋慎内野手(1年)も戦力になりそうだ。

「自分たちの戦力がどのへんか、だいたい分かる。しかし、短期決戦で選手を踊らせて自信を持たせてやれば、ある程度のところまで行ける。子どもに、自信と勇気がつけば見違える力を発揮できる。引っ張り出すのが監督の仕事、手腕」

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4番の西脇昂暉主将(2年)が「甲子園で勝てるチームを作りたい」と話せば、エース五島も「甲子園は夢。大垣日大らしい野球で気迫を前面に出して暴れたい」と気合を込める。真冬の野球場で3時間以上、立ち続ける77歳の姿を見た。寒風がほおを刺すなか、大垣日大の熱が伝わってきた。