きょう組み合わせ抽選 63年全国Vの古豪・明星、最後の甲子園から50年目の夏へ挑む/大阪

今年の明星ナイン(明星提供)

かつて大阪の夏を制した、あの高校は今…。近年、大阪桐蔭、履正社をはじめとする強豪私学が優勝を独占している夏の大阪大会も、平成初頭まではさまざまな高校が頂点に立っていた。浪商(現大体大浪商)に大鉄(現阪南大高)、興国。公立では渋谷、春日丘、八尾、寝屋川など、オールドファンには懐かしい名前が並ぶ。63年夏に全国制覇を達成した明星もそのひとつ。今日23日の大阪大会組み合わせ抽選を前に、ちょうど50年前の72年を最後に甲子園から遠ざかっている古豪の近況をお伝えします。

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めいせい-。オールドファンには懐かしい響きだろう。それもそのはず。明星が最後に甲子園に出場した72年(昭47)からは、すでに50年が経過した。全国制覇を達成した63年(昭38)から10年間で5度、大阪の夏を制した古豪も、今ではすっかり影を潜めている。

東北福祉大を経て母校を指揮する50歳の吉村卓也監督も、もちろん甲子園で躍動する明星の記憶はない。それでも伝統の重みは十分に感じている。「このユニホームを着ている以上、毎年甲子園を目標にしなければいけないと思っています。選手も思いは同じです」。

「大阪私学7強」といわれた60~70年代は常に上位を争っていた。だが80年代から進学校化が加速。90年代に入ると大阪桐蔭などの新興勢力も台頭する。スポーツ推薦を行っていない明星と強豪校との差は拡大し、上位進出を阻まれてきた。ただ、古豪復活の機運は高まりつつある。昨夏は2回戦で、昨秋も3回戦で敗退したが今春は5回戦に進出。激闘の末、8-9で上宮に逆転負けを喫したものの、夏のシード権を勝ち取った。

転機は14年夏の8強進出だった。準々決勝で関大北陽相手に奮闘する姿が文武両道を目指す中学生の心を打った。以後、中学時代に硬式野球を経験した選手が毎年、一定数入学。16、19年に4回戦、20年(代替大会)には5回戦に進出し、ここ10年間で4回戦以上が4度と健闘している。

「素質のある選手が結構入ってきてくれます」。OBの亀甲由貴宏コーチ(63)の指導にも熱が入る。「それにわれわれの頃と違い(笑い)頭も優秀。8年前の8強メンバーは現役で京大に2人合格しました。しかも1人は医学部です」。全力で野球と学業を両立する後輩の姿に目を細める。

2年前のエース中森光希は早大で今春、リーグ戦デビュー。2年生ながら、甲子園経験者がひしめく東京6大学で先発、中継ぎとフル回転の活躍をみせている。同じく早大では三宅隆二郎(4年)もリーグ戦に出場。中学硬式野球の強豪・生駒ボーイズ時代から定評のあるシュアな打撃を武器に外野の一角を狙っている。さらに上智大の4番主将・馬淵智成(4年)、神戸大で1、5番を打つ斎藤大地(4年)、立命館アジア太平洋大の4番・森本将太郎(4年)など各地のリーグで主力を務めるOBも多い。そんな先輩に続け、と現役部員も闘志を燃やす。

今年も全国屈指の激戦といわれる大阪大会が幕をあける。明星にとって、頂点への道のりは険しくて果てしなく遠い。でも「相手は同じ高校生。名前負けはしたくない。最低でも8強。目標は甲子園」と石川潤平主将(3年)。昨夏も4番に座り、2試合連続で本塁打を放った主砲は力を込めた。吉村監督も「今年は大黒柱がいない分、複数投手を整備しています。課題は言い尽くせないほどありますが、チーム力は昨年より上」と前を向く。50年ぶりに輝きを取り戻せるか。古豪の挑戦が、また始まる。

<明星OBコメント>

▼63年夏、甲子園優勝時2年で二塁手・山岡文次郎氏(75) 「今と同じで、平日はグラウンドを2日に1回しか全面使用できなかった。本格練習が毎日じゃないからか、当時は他に仕事を持っている監督ばかり。63年から夏は10年間で5度甲子園に出たが、監督は真田重蔵さんから始まって、毎回違う人。5人とも教師じゃなかった。それが明星らしかったし、珍しかった。今はOBの教員が監督で、練習は当時より厳しいんじゃないかな(笑い)。がんばってるので、ぜひ甲子園に戻ってきてほしい」

▼前回甲子園に出場した72年夏のエース・辻内修氏(68) 「もう50年ですか…。ぼくらの10年上が全国制覇の代で。その方たちでも、とてつもなく上に感じた。それが50年なんて…。とんでもないですね(笑い)。もちろん甲子園に出てもらうのが一番うれしいですが、(予選敗退でも)毎年OBは楽しませてもらってます。高校で野球が終わるわけではないので、大学、社会人へのステップにすればいいんじゃないですか。今年は早稲田で2人がリーグ戦に出ているようですね。そういうのを見ると、やっぱりうれしいものです。後輩が活躍してくれることを願っています」

◆明星(めいせい) 1898年(明31)創設の私立男子校。野球部は1905年(明38)創部。甲子園は夏8度、春4度出場。63年夏は、同年センバツ1回戦で敗れた下関商を決勝で下し優勝。主なOBは元阪神、南海の和田徹氏、元巨人の阿野鉱二氏、元南海で引退後は長年スカウトを務めた堀井和人氏、元近鉄の平野光泰氏、元大洋の山口忠良氏、昨年までNHKの高校野球解説を務めた前田正治氏ら。所在地は大阪市天王寺区餌差町5番44号。部員46人。松田進校長。

◆今年の明星 4番石川を中心とした打線は破壊力十分。春季大阪府大会は5試合で41得点。下位打者も本塁打を記録し、切れ目がない。5回戦では上宮が繰り出す好投手を攻略。14安打に機動力もからめて8点を奪った。投手陣の軸は昨夏も先発経験のある奥田将太(3年)。持ち前のスタミナに加え、球威、変化球のキレも向上した。制球力が夏への課題か。川島謙大捕手(3年)のリードがカギを握る。力のある1年生も入部。新戦力の台頭にも期待がかかる。

◆大阪のシード校 大阪のシード制は昨夏から導入された。シード権は、春季大阪府大会でベスト16入りしたチームに与えられる。シードに第1、第2などのランク付けはなく、いずれも2回戦からの登場。3回戦まではシード勢同士の対戦はない。今年は優勝した大阪桐蔭、準優勝の履正社、ベスト4の上宮、東海大大阪仰星、ベスト8の初芝立命館、大体大浪商、大商大堺、東大阪大柏原、ベスト16の大阪電通大高、金光大阪、鳳、大院大高、興国、太成学院大高、近大泉州、明星の16校。このうち公立は鳳の1校だけ。ちなみに16校中6校(大阪桐蔭、履正社、上宮、大体大浪商、興国、明星)が甲子園で優勝を経験。大阪のレベルの高さをあらわしている。

◆第104回全国高校野球選手権大阪大会 7月9日開幕、165チームが参加予定。3回戦までは北地区と南地区で抽選し、4回戦以降は南北をあわせて再抽選する。