<高校野球西東京大会:日野台7-2私武蔵>◇13日◇2回戦◇府中市民球場
前を向くために、主将はボール球を振りにいった。
日野台・先発はエース右腕・林慈央投手(3年)。初回に2点を失ったものの、2回以降はノビのある直球とカーブを駆使し、凡打の山を築いた。一方の打線は、3回裏に同点とするも、次の1点がなかなか奪えない。4回からは3イニング続けて、3者凡退に打ち取られた。
2-2のまま迎えた7回裏の攻撃前、畠中陽一監督(55)から「積極的に振りにいこう。そのために、いつも朝7時から打ち込んできたんじゃないの?」と喝が入り、沈黙していた打線が奮起。2死二、三塁とし、身長163センチと小柄な主将・森優人三塁手(3年)が左打席に立った。
セーフティーバントの構えを見せて、1ストライクとなった後の2球目。顔の位置くらいの高さのボール球を、思い切り振った。「どんな球が来ても振ろうと思っていて、1回スイングして気持ちを切り替えたかった」。バットは空を切ったが、集中力は高まった。1-2からの4球目。もう1度バットを強く振ると、打球は外野の芝に弾んだ。
「あの空振りで、すっきりしました」
カウントは追い込まれたが、心は決して追い込まれていなかった。森の2点適時打が、チームに勝利を呼び込んだ。
新チームで主将となり、強く言えない自分と向き合ってきた。練習の雰囲気がよくない時は、自ら集合をかけるようにしたが、強く指摘することができず、自分自身で「集めた意味ってあったのかな」と首を傾げることもあった。
「気を使っちゃうのもありますし、仲がいい分言えなかったりして…」
主将として、迷いながら歩んできた。
しかし、気を使うことができるからこそ、救われている仲間もいる。完投した林は「先頭打者を四球で出すこともあったんですけど、その時に絶対に声をかけてくれて、落ち着いて周りを見ることができた」と、森の言動に感謝する。
小柄な主将がけん引する日野台は、16日に早実との3回戦(スリーボンドスタジアム八王子=11時30分開始)に臨む。春の都大会3回戦で、2-10の7回コールド負けを喫した相手だ。
「また早実とできるので、気持ちは上がっています。早実と対戦できて、よし!という感じです」
春の雪辱を果たし、目標の8強進出をたぐり寄せる。