<BIG LOSER~敗者にもドラマ~>
<高校野球西東京大会:早実4-0日野台>◇18日◇3回戦◇スリーボンドスタジアム八王子
0-4で迎えた8回表の日野台(西東京)の守り。三塁手の森優人主将(3年)はフライを捕ると、エース右腕の林慈央投手(3年)へ、いつものように声をかけた。「三塁に打たせるのは安心感がある」。エースと主将は、小学生からの幼なじみだった。
家は歩いて10分ほど。初戦の2日前にも一緒にバッティングセンターへ出かけた。三塁からいつも励ましてくれる存在だったが、時にはあだになることもあった。林はあと1人でノーヒットノーラン達成という状況が2回あったが、いずれも安打を許した。いずれも森に「あと1人だ」とプレッシャーをかけられたからだ。「3回目があれば、三塁は絶対に見ない」と林が言えば、「実力だから仕方がない」と森も応戦する。信頼しあうからこそ、何でも言い合うことができた。
大坂上中(日野市)時代には、2年秋に都大会4強入り。2人で日野台に入ると、林は体重も54キロから75キロまで増え、120キロだった直球が最速134キロにまで上がった。森も主将を務め、三塁のレギュラーをつかんだ。私学を倒す夢が膨らんだ。
3回戦で対戦した早実は、今春の都大会で2-10で7回コールド負けを喫した相手だ。「春からの成長を試せるのが楽しみ」と燃えていた林は9回144球の粘投で4点に抑えたが、勝利には届かなかった。それでも「前より成長できた」と胸を張る。そう言えるのは、相棒がずっと支えてくれたから。「たまに悪口も言われるけど、いつも声をかけてくれて本当に心強かった」。林の目に涙はなかった。春からの成長と、変わらなかった声かけと。2人の夏は、すがすがしく幕を下りた。【藤塚大輔】