仙台商・狩野主将、全国大会出場へ「楽しんであと2勝」軟式野球東東北大会あす開幕

挟殺プレーで走者を追いかける仙台商・狩野(左から2人目)(撮影・相沢孔志)

“逆転の仙商”は、最後まであきらめない。第67回全国高校軟式野球選手権大会(8月24日開幕、兵庫・明石トーカロ球場ほか)出場をかけた東東北大会が30日、岩手・しんきん森山スタジアムで開幕する。19年以来の全国切符を狙う仙台商(宮城)は同日、盛岡一(岩手)との初戦に臨む。狩野宏人主将(3年)がチームを引っ張り、就任10年目の西山康徳監督(40)と戦う夏を長くする。

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東東北王者と夏の全国舞台へ、仙台商ナインが突き進む。守備では二塁を守り、打線の中軸を担う狩野は「目標は全国大会出場。勝ちにこだわりすぎず、楽しんであと2勝したい」と引き締まった表情を見せた。今夏の県2回戦では今春に敗れた仙台育英に雪辱。仙台工との決勝は、3回に先制を許したが6回に逆転。2-1で逃げ切り、優勝を果たした。

「県王者」の称号をつかめたのは“後押し”が1つの要因だ。決勝は全校応援。仙台商の応援席には900人を超える生徒が駆けつけた。「ずっとコロナで春高バレーの全校応援もなく、なかなか学校がひとつにまとまるきっかけがなかった」と西山監督。独特な雰囲気の中、選手は燃えた。狩野は「今までに経験をしたことがなくて緊張したが、応援の力もあって後半に粘れた。負けている状況でも声がなくなることもなく、いい試合だった」。

冷静な野球が勝利の鍵を握る。今夏は全4試合中3試合が逆転勝利。泉との1回戦は4点を追う6回から3イニングで8得点。指揮官は「1回戦が終わった時に“逆転の仙商”でいいじゃないかと。点数を取られても落ち着いて最後、9回が終わった時に勝っていればいい」と伝えたという。仙台育英戦は序盤に2点をリードされたが取り返し、1点リードの7回に2点を追加。2年連続の東東北大会出場を狙う相手を退け、頂点に駆け上がった。

就任10年目の節目。1日でも長く3年生と野球をすることが願いだ。「ちょっとでも長く野球をやらせてあげたい。10年目の奇跡が起きればいいかなと思う」。20年入学の3年生は新型コロナの影響で入学式が遅れ、入学後も学校行事がなくなることもあった。その中、高校最後の大会でつかんだ県王者。東東北大会で2勝すれば、念願の全国切符をつかむ。

狩野 入学してからは全国に行けていない。自分たちが朝早くから練習をしているということは、先生も朝早くから来られている。一緒に頑張ってきた「仲間」という意味も込めて全国に行きたい。

逆境でも全員で戦い、仙商がミラクルを起こす。【相沢孔志】